プロローグ
それは生放送中に起きた、突然のアクシデントだった。新曲の告知も含めたとある音楽番組でのこと。司会進行役のタレントとテレビ局のアナウンサー、そして他のアイドルグループもいる中「続いては今日がテレビ初披露、Edenの皆さんで──」とお決まりの定型文のような言葉を女子アナが言う。観客たちの拍手が響き、それが静まったタイミングでリハーサル通りに曲が流れた。Edenの新曲がスタジオに流れその場の空気を支配する。
彼ららしい曲調、振り付け、演出は見る者、聞く者を魅了する。明るくもどこかに誘うような日和の声、荒々しくも力強いジュンのパフォーマンス。なによりも、その声、完璧なパフォーマンス、圧倒的な存在感で全てを支配しゆくアイドルとして生まれ落ちたと言っても過言ではない男──Eden及びAdamのリーダーである凪砂。それを斜め後ろで歌って踊りながら内心で満足気にほくそ笑むのは、楽園の毒蛇にしてプロデューサー、コズミックプロダクションの副所長である茨だ。
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