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    秘みつ。

    @himi210

    @himi210 小説 / 毎日更新12:00〜21:00 / 凪茨右茨ジひジ▼感想質問お気軽に📩 http://bit.ly/3zs7fJw##ポイピクonly はpixiv未掲載ポイピク掲載のみの作品▼R18=18歳以下閲覧禁止▼##全年齢 for all ages▼連載一覧http://hi.mi210.com/ser▼連載後はpixivにまとめ掲載http://pixiv.me/mi2maru▼注意http://hi.mi210.com/guide▼フォロ限についてhttps://poipiku.com/19457/8988325.html

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    凪茨▼精神崩壊茨※モブ茨要素があります

    ##凪茨

    茨が壊れてしまった 茨が壊れてしまった。
     夜のしじまに、茨のうわごとだけが響く。
    「たすけ、て……手錠これとって……ねえ、おねがい……かっ、かどこ……やだ、やだ……おくすり、ちょうだい……こわいよぉ……かっか……シよ……たす、けて……」
    「私はここだよ、茨……」
     犯人に監禁され、酷い陵辱を受け、薬漬けにされて洗脳催眠された。助け出した茨は酷く傷付いていて、壊れていた。
    「だあれ……?」
    「……凪砂だよ。きみの閣下だよ、茨」
    「かっ、か……?」
     ぼんやりした海色は死んでいて、私を認識しない。犯人が認知領域をいじって、茨の『閣下』を簒奪した。犯人が『閣下』に見えてしまう茨は、簡単に犯人を愛した。
     私が茨に、愛の告白をした、翌日だった。
    「かっか、じゃ、ない、……おれ、の、かっかはぁ、おれ、を、たーくさん、あいして、くれ、るの……♡ ほら、もうすぐ、あかちゃん、うまれるから……♡ たくさん、種付けしてもらってぇ……♡ あかちゃん、いーっぱい、産んで……♡ 家族になるんだぁ……♡」
     茨は空虚な笑顔を浮かべて、いつわりの幸せをくちにうかべる。強い催眠によって、現実と空想がぐちゃぐちゃになってしまった。
    「茨、それは嘘だよ……」
    「うそじゃ、ない、ほんとう、……おれ、おれ、閣下と、しあわせになる、だって、かっかが、そう、いってた、……かっかは? かっかはどこ……? ねぇ、ねぇ、おれの、かっか、……あんた、閣下に似てんね」
    「茨」
    「……『閣下』……?」
     その刹那、ピントがあったように、正気が海色に宿る。そうして狂気を知ってしまう。わずかばかりのまともな茨の顔が、歪んでいく。
    「ちがう、ちがう、こんなの、ちがう、おれ、おれ、ああ、いたい、やだ、たすけて、みないで、おれ、は、やだ、やだ! ちがうう……、ぜんぶ、うそ、うそだ、ちがう、かっか……ちがうんです、ちがうから、かっか、かっかぁ……っ、ころして、ころして、みないで、あ、あっ! あああ! あああああ!」
    「茨、おちついて、大丈夫だよ、いばら」
     暴れる茨の命を守るために、やってきた看護師たちが体を押さえつける。舌を噛み切らないように、開口器をくちに嵌め、鎮静剤を投与した。
    「……大丈夫だよ、茨、もう、大丈夫……」
     力が抜けた茨の瞳から、涙が溢れて頬を伝った。
     深い闇が、私と茨の間に横たわっていた。

     ***

     宵に染まる海辺を、茨と二人で歩いていた。満月が登って、夜にくっきりと影を作る。茨のつくってくれた夕食を食べてから、散歩に行こうと連れ出したのだった。
    「閣下、お体が冷えますよ」
    「……うん、そうだね」
     茨を振り返って、きれいな海を覗く。そうして、その手を拾い上げた。
    「……手、つめたいね」
    「すみません、早急に温めます」
    「……ううん、こうすればあったかくなる」
     ぎゅ、と茨の手を両手で握りしめて、体温を交わらせた。
     そうして、その指先に、そっとキスをする。
    「茨、私ね」
     静かな茨の顔が、少しだけこわばって、私を見ていた。
     ざんざんと、波が押し寄せては引いていく。
    「……私、茨のこと、好きだよ。……大好き。愛している、といったほうがいいのかな」
     やっと言葉にできた。ずっと募らせた思いが沸き立っていく。握りしめた手はすっかり温かくなって、やわらかい。
    「……だから、ずっとそばにいさせてね。……それだけ。それをいいたくて、ここまで来た」
     茨は海色を潤ませていた。静かだった。何も変わらない日々が続く気がした。ばたばたと海風が二人の服をはためかせた。
     いつもおしゃべりなくちが、この時だけ静かなのがなんだかおかしい。呆れられて、当たり障りなく流されると思っていたのに。
    「おれで」
     手が握り返される。
    「俺でいいんですか……」
     捨てられた猫みたいに、茨は不安げに、つぶやいた。
     自分に価値があるなんて知らない、いのちのかたまり。
    「茨がいいんだよ」
     打ち寄せる細波が、茨の表情かおを変えていく。
    「俺も、ずっと、おそばにいられたら……」
    「うん」
    「好きなんて、いって、……ゆるされますか」
     茨が普通の人間みたいに、世間を気にしているのがおかしかった。
    「……好き?」
    「すき、……です」
    「……うれしい」
     私はたまらず、愛しいきみを抱き寄せた。愛がかち合って、はまる音。それがひろい海にこだましていった気がした。
     二人の熱が混ざり合って、何かを形成していく。随分長い時間、そうしていた。
    「茨、帰ろうか」
    「はい……閣下」
     呼ばれるこえがむず痒くて、体の芯が震える。くらい夜道、人通りが少ない路地を通って、手と手をひっそりとつないで歩いた。静かだった。何も変わらない日々が続く気がした。
     ESまで帰って、茨はオフィスに用があると入り口で別れた。
    「……明日、またね」
    「また、明日」
     そんな顔でわらう茨をしらなくて、私は確かに幸せだった。
     茨の消息は、その時から途切れている。


    続く
    (220603)
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