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    秘みつ。

    @himi210

    @himi210 小説 / 毎日更新12:00〜21:00 / 凪茨右茨ジひジ▼感想質問お気軽に📩 http://bit.ly/3zs7fJw##ポイピクonly はpixiv未掲載ポイピク掲載のみの作品▼R18=18歳以下閲覧禁止▼##全年齢 for all ages▼連載一覧http://hi.mi210.com/ser▼連載後はpixivにまとめ掲載http://pixiv.me/mi2maru▼注意http://hi.mi210.com/guide▼フォロ限についてhttps://poipiku.com/19457/8988325.html

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    凪茨▼足を失った茨、それを助ける凪砂
    リクエストありがとうございました

    凪茨リク企画http://hi.mi210.com/718_22

    ##凪茨
    ##全年齢

    私と茨の自由「いちいち感謝しなくてはいけないのが、つらいんです」
     車椅子の茨を外に連れ出そうとしたら、静かな顔で、何でもないように、茨はつぶやいた。私は茨の顔を見たくて、しゃがんで、見上げてみる。
    「いやなやつですよね。でも、そう思ってる。俺はゴミクズなので」
     そういってわらってみせた。平気をコーティングした笑顔。それがいたいほどわかって、私はぎゅっと茨の手を握る。
    「……茨はゴミクズなんかじゃないよ」
    「実際そうでしょう。足を無くして、なにもできない」
    「……今まで通りに戻ってきた。バリアフリーの整備もして、学校も副所長も、それから……」
    「閣下の役に立たない」
     茨の失われた両足が、気丈な茨にそんなことをいわせる。茨は私のケアを出来ずに、苛立っているのだろう。
     生きがい。
     生きる意味。
     七種茨と乱凪砂。
     私は思わず、小さくなってしまった茨を抱きしめた。
    「……全部私がやってあげる。感謝しなくていい。私がやりたくてやってるんだから」
    「そんなの」
     その表情かおを見れたらよかったのかもしれない。私はぎゅっと、つよく、抱きしめる腕を強くした。
    「……私がきみに傅くよ、茨。私を使って。きみの最終兵器なんでしょう?」
     息を呑む音がした。茨の心臓が匂い立って、その鼓動が何も変わらない愛おしさだと、私に、わからせた。

     ***

    「……これで大丈夫」
     茨の車椅子のメンテナンスを終えて、額の汗を拭った。茨は椅子に座って打鍵している。
     茨はあれから私をよく使った。仕事先の些細な段差をクリアするためだとか、荷物持ちだとか。私は茨に頼られて嬉しかったけれど、茨は終始不機嫌な表情かおで、そこにいる。茨のその感情を見られたのはいつからだったろう。わざと私を振り回そうとしているのはすぐにわかった。茨の思惑の外で、私は逆に、喜んでしまう。いつも他人のためにご機嫌を保っていた茨の笑顔を、被らないでいてくれているということだから。
    「……茨、休憩しよう。お茶を淹れてあげるね」
     コーヒーを淹れて、茨をソファに運ぶ。隣り合って、私はチョコを齧った。茨はくろい液体をじっと見て、しばらくしずかを味わった後、ちいさくつぶやいた。
    「……俺を嫌いになってください」
     茨の、ねがい。今日までの茨のわがまま。
    「どうして、おれ、なんか」
     何もわかっていないそのこえ。
    「おれ、もう、かっかの、やくに、たた、ない……」
     どうしてそんな弱気になってしまっているのかわからない。十全に、仕事も学業もアイドルも、以前と変わらないくらいこなしているのに。義足のリハビリも、何度も倒れながら努力している。私がいなくたって、一人で生活するやりかたを、もう手に入れているのを知っていた。
    「……役に立つとか、立たないとか、そんなの問題じゃないよ、茨。互恵関係じゃなくたって、私はきみのそばにいる」
    「でも」
    「茨が大切だから。私の大切なもの、一生涯をかけて守りたいもの、それが、きみだから」
     もう既に、利害の一致以上だと思っていた。茨はそれがわからない。損得が介在しない繋がりを、茨は受け入れられない。
     だから、茨がかつてつぶやいた、願いを私も反芻する。
    「……茨の野望、まだ道半ばでしょう? 私は知ってる、茨はきっとやり遂げる」
     その揺れる海色が美しかった。どんなに変わっていったって、茨は努力の才能で這い上がる。それを助けたって、バチは当たらないはずだ。
    「……じゃあ、私のためにわらってくれる? 役に立つ茨のわるい笑顔を、私に見せて?」
     その頬に触れた。かしこい茨は全て理解して、敬礼してみせる。
    「アイ・アイ!」
     私たちはわらいあった。共に進む未来を、確かに感じながら。

     ***

     四季が過ぎて、また同じ季節を迎えている。茨は義足のリハビリを目を見張る早さでこなして、こうして、一人で歩けるようになった。
     はらはらと色づいた紅葉がおちて、公園の外歩道を進む茨をうつくしい絵画にする。
     私はそれを、写真に収め、その隣に急いでついた。
    「……歩くのが、楽しいです」
     遠くの空を見て、それから私を見てくれる。
    「閣下と、歩くのが、楽しい、です」
    「……私も、楽しい」
     そこに理由なんてなくて、ただの自由だけがあった。
     私と茨の自由。
     やわらかくうつくしいその響きが、私たちをつなげてくれていた。


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    事故で足を失くした茨を世話したい凪砂と凪砂の役に立ちたい茨

    (220911)
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