sexual scrap #1己の股間を凝視する姿に何と声を掛けるべきか。二人で入るには窮屈な浴槽に向かい合うこの状況で、その気まずさは言葉にならない。
「俺このままじゃ魔法使いになっちまうかもしれねぇ。」
ゆっくりと顔を上げたイヌピーの真顔っぷりに「意味わかんねぇんだけど」と口をついて出てしまったのは致し方ないだろう。俺の恋人はビックリするほど時々不思議ちゃんなのである。
「真一郎くんが、」
「待て。いい、もうそれ以上言うな。」
その名前はフラグだ。十中八九しょうもない話に決まっている。聞く気はねぇぞとそっぽ向く俺に「聞けよココ!」とイヌピーが浴槽の水を吹っ掛けてくる。俺は腹を立ててる訳ではなく、くだらねぇ話題に違いないそのフラグはへし折っておきたいだけなのだ。謎に股間を凝視するその姿勢、突然の魔法使い宣言、そして真一郎くんという名前。どこを切り取っても聞くに値しないことを言うに決まっている。
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