君の負け「スパイディ、俺ちゃん、10年くらいNYを離れようって思ってる」
唐突だった。何故か泣きそうな顔をしたウェイドが人差し指同士を突き合わせながら、まるでお皿でも割った子供が罪を打ち明けるようにして言ったのだ。
ウェイドは嵐のような人間だ。気分も嵐のように目まぐるしく変わるのは知っているので、その発言くらいでは動揺するのも億劫になるほどには僕もウェイドに慣れていた。
「理由を聞いても?」
こう言うときの、どうしようって顔をしたときのウェイドはコチラが丁寧に質問をすれば答えてくれる。彼の気分次第で、本当に10年、唐突に連絡が取れなくなる可能性だって十二分にあったのでむしろこうして打ち明けに来たのはまだマシな方だ。
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