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    金カム尾形。尾杉・杉尾・リバ好きです
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    バーで出会い仲良く恋愛の話をする杉と尾のお話の続き16
    杉と尾がもだもだするお話。

    バーで出会い仲良く恋愛の話をする杉と尾のお話の続き16脚が重い。心も体をも引きずりながら、ホームに辿り着いた。終電に乗りこんだのは、死にかけたサラリーマンや遊び疲れた大きな子供たち。マスカラの滲んだ若い女は幸せそうに恋人に寄りかかっている。ティーンエイジャーを見て思わず舌打ちをしたくなるが、それは自分の哀れさと比較してしまうからだろうか。男は自分に寄りかからせて、女のカスカスに傷んだ金髪を梳いている。自分にはこの人しかいないって感じだ。周りが見えていないのは、自分がさっきクラブで怒鳴り散らしていたのと似ているが、全く似ていない。ああ、まだ宇佐美の高笑いが脳にこびり付いて離れない。
    しかし笑えてくる。杉元さんの腹を踏みつけたせいだろうけど、この最終電車で片足をザーメンまみれにしてる奴は俺しかいないだろう。その貴重なシチュエーションで何故か元気が出てくるっておかしいよな。駅に着いて埃っぽい電車から降りる。今すぐベッドに飛び込みたいが、俺にはまだやるべきことがある。もしかしたら今日の寝床が無くなってしまうかもしれないけど、絶対にやり遂げなければならない。


    この間の無様さが気まずくて店の前で足踏みをしたけど、意を決してバーの扉を開ける。早い時間なので誰もいない。
    「こんばんは杉元さん。オープンからなんて珍しいですね」
    マスターは商売人らしくいつもと変わらない態度と距離で俺を迎えてくれた。今はそれがありがたい。どこに座るか悩んだけど結局カウンターのいつもの席に腰掛けた。今日は金曜日だ。酒と浮かれた空気を求めた人たちで早めに混んでくるだろう。
    キイっと早速扉が開けられた。初めの客は誰だろうとさり気なく目をやると、一週間ぶりの尾形さんが入ってくるところだった。深い黒のチェスターコートに身を包み、グレーのぴったりしたパンツ、黒いVネックのニット。尾形さんが歩を進める度に、いつあの黒い瞳が俺に向けられるかと身が強張る思いだったが、ついぞその瞬間はこなかった。止めていた呼吸が戻ってきた時にはもう尾形さんはカウンターの後ろの小さなテーブル席に座っていた。マスターがオーダーを取りに行く。
    「こんばんは。いつものものにしますか」
    この間のことなど匂わせもせず、にっこりと見慣れた笑顔で提案する。ふふと小さく笑って尾形さんが初めて顔を上げた。
    「また来ちゃいました」
    「寒いですから美味しいのを召しあがって温まってください」
    「じゃあいつものを常温で。ダブルで」
    「かしこまりました」
    マスターは別れたらまた来ますって尾形さんが言っていたことを覚えているのだろうか。もちろん俺は心に刻まれていて、加えてそれを頼りにしているのだ。そして尾形さんはオープン直後に来店するのは初めてのはずだ。この離れた距離では何かを尋ねることも出来ない。マスターが見てない時を狙って振り返り、尾形さんをまともに見つめた。早く目が合ってくれと思う。でも尾形さんは下を向いてスマホを弄りながら顔をゆっくり左右に振った。俺に向けての警戒だ。俺がいることは分かってくれていると知っても、やはりとても悲しくてまた前に向き直る。そういえば俺は尾形さんの姿に慌ててしまい、何も注文していないんだった。黒い生ビールをオーダーしてがっくりと席に座る。この調子では沈黙したまま他の客が入ってきて、二人だけの時間は終わることだろう。
    マスターが尾形さんに酒を運ぶ。
    「家出しちゃいました」
    尾形さんの自嘲した声が聞こえる。途端にどきどきし始めてしまい、聴覚以外が消える。頼むからもうちょっと詳しく話してくれ。
    「そうですか。でも何か吹っ切れた顔してらっしゃいますよ」
    「まあね。自分から出てきてるので」
    「成る程、新しい門出ってわけですね」
    ひどいなあ、と話の内容とは裏腹に楽しそうな声が大きく聞こえる。会話の意味を考えているうちに、目の前に黒ビールのグラスが置かれた。コースターとグラスの隙間に二つ折りになったメモが挟まれている。IDだった。これはもしや。肩越しにそっと目をやると尾形さんは頬杖をついてこちらに背中を向けて壁に掛けられたリトグラフなんか眺めている。合言葉よろしく自分のスマホに入力して通信会話の接続を試みる。「尾形」の名前ですぐに見つかった。アイコンは黒い猫。その猫の黄色い瞳が大丈夫かと言わんばかりに俺を見ている気がする。深呼吸で息を整えてタップする。
    『寒くないんですかまた生なんか飲んで』
    背中が強張って絶対に振り向けないと思った。全ての神経と感覚が小さなスマホに集まる。雪山で遭難して、最後の一本のマッチの火を守っているような気持になる。遭難しているのは今もだけど。
    『寒くないです』
    我ながらむき出しの取り繕いに恥ずかしくなるが、会話が途切れないように急いで送る。メッセージが既読になる。また息が出来なくなってきた。喉が渇くがとてもグラスを手に持つ暇がない。両手でスマホを握りしめ、画面を睨んでしまう。
    『こんばんは』
    『こんばんはです』
    探り探りの一言を意味ありげに送られてくる。
    『杉元さんがオープンからって珍しいですね』
    『たまにはいいかなと思って』
    嘘だ。金曜日なら尾形さんが来るかもしれないと思って、そして罠を仕掛けるなら最初から最後までいなければと考えてこの椅子にいる。でもそんな下心を送信するわけにはいかないから、久しぶりの会話に障らない間抜けな言葉を送った。
    『俺はそう長くはいないんですけどね』
    『そうなんですか、体調悪いんですか』
    『いや全然』
    『じゃあどうしたんですか?』
    『さっきの聞こえました?』
    えっ、と頭が固まる。勝手に聞いていたから後ろめたい。
    『別れました』
    「えっ」
    尾形さんがチラッとこっちを見た気がする。後ろから視線を感じるけど振り返って全てを台無しにしたく無い。
    『そうなんですね、なんて言ったらいいのか』
    『また新しい恋人を作ろうかなとは思うけど』
    どくどく、どくどく心拍が早くなり血の流れる音が耳に響いて何も聞こえない。手汗がじんわり湧いてきて何度も袖でスマホの画面を擦りつけた。それでも1秒たりとも見逃せなかった。
    『誰か好きなん』
    やべ、慌てすぎて途中で送っちゃった。
    ブフゥと尾形さんが笑った声がする。ちょっと余裕が生まれて入力の手が滑ることは減った。
    『正・誰か好きなんですか』
    『笑っちゃいました。一応いますよ。でもね』
    『でもどうしたんですか』
    『嘘つきな人』
    『どうしてですか?』
    『俺のことじゃないのに俺のせいにした』
    『それ誤解だって言ったじゃないでしか!』
    やばい、ここで噛んだ。フリック入力のやつ…! また尾形さんが笑った気がする。
    『好きです』
    えっ
    『会いたかった』
    『すごく』
    『沢山好きだ』
    『見られるとドキドキします』
    『格好いい』
    えっえっ
    『でもちゃんと俺だけを好きになってくれていない』
    『身体まで許したのにひどい』
    『やっぱりやめます』
    尾形さんの怒涛のメッセージに置いて行かれて、スクロールもままならなくて手が滑ってしまう。
    『ちょっと待ってって!』
    思わず立ち上がりたくなるがこれは尾形さんの思うツボなので、何とか堪える。えっ俺のこと好き? たったこの前あんなだったのに? いつから? やばいめちゃくちゃ嬉しくて脚そわそわする。どうしたってにやけてしまうから握った手で口を押さえる。今のやにさがった顔をマスターに見られたら終わりだ。
    『俺、尾形さんのことだけがちゃんと好きです!』
    今伝えなくちゃ、また指の隙間からチャンスが逃げていくかもしれない。
    『はあ』
    覇気のない返事が即返ってくる。でも負けてはいられない。
    『本当に好き』
    『かわいい』
    『俺もずっと会いたかった』
    『いい匂いがする』
    『カワイイ』
    『すごい好き』
    『毎日尾形さんのこと考えてる』
    『かわいい』
    『大好き』
    あれ、すごい好きなあたりで既読が付かなくなった。頭を掻く振りをして後ろをこっそり覗き込む。スマホをテーブルに伏せて、こちらに背を向ける尾形さんは頭をぺたぺた撫でていた。
    『かわいい大好き』
    既読がつかないけど、本心からのメッセージをもう一度送信した。
    後ろからバイブレーションの音が聞こえて、やっと既読になる。
    『俺も好きです』
    がちんとテーブルに硬いものを置く音がして、またそっと振り向くと尾形さんがテーブルで腕を組んでその上に突っ伏しているのが見えた。額を手で押さえているけど白いうなじに熱を持っているのが分かる。
    前を向いて何か送られてくるのを待つ。顔の筋肉を抑えられず、落ち着きたくて泡の消えた黒ビールを初めて飲み込む。濃い美味さを味わった。
    『杉元さんの服脱がせたい』
    ばふぅって黒ビール噴いた。思わず勢い良く後ろを振り返ると尾形さんはにっこり満面の笑顔で小さく手のひらだけ振ってきた。手の中のスマホが震える。
    『やっぱり格好いい』
    『すごく好きだ』
    『抱きしめてほしい』
    『匂い嗅ぎたい』
    『一緒に寝たい』
    ちょっと待って、速度がやばい。メッセージが読めないくらい打つの早すぎ。何より俺の鼓動が早くなりすぎる。これは呼吸が乱れる。何とか口の周りを拭き、黒ビールをもう一度飲む。一瞬でも見逃せないからスマホを目の前にかざして飲む。
    『杉元さんもかわいい』
    『傷も舐めてあげたい』
    またビール噴いた。頭に血が上りすぎて対応が出来ない。マスターがこっち来ちゃうかも。コートの袖がびちゃびちゃなんだけど。
    『パンツ脱がしてあげたい』
    『舐めてあげる』
    『フェラしたい』
    『玉も全部なめてあげたい』
    『いくとこ見せて』
    『杉元さんのアレすごくいい』
    ちょっと待ってよ! 嫌がらせかよ! 思わず後ろを向くと、信じられないことにもの凄い爆速でスマホをタップしながらにやーって笑う尾形さんがこっち見てた。しかも手を振ってる。くそっ! やめろ!
    『尾形さんこそかわいい』
    『格好いい』
    『エロい』
    『舐め回したい』
    『おっぱい大きい』
    『乳首きれい』
    『お尻大きくてかわいい』
    『えろい』
    『フェラうますぎ』
    『お尻また舐めたい』
    『めっちゃエロい』
    追撃が来なくなったからもうこのぐらいにしてやるか…ふう。しかしエロい言いすぎたな。おっさん臭丸出しじゃねえか。
    『本当にしてくれる?』
    やばいのきた。会話になっちゃった。
    『するする』
    ナンパ師かよ! 他になんか言うことあるだろ! とりあえず送信する。
    『うれしい。どうしてくれる?』
    うあーそうきたか。早く返さないと。
    『いっぱい舐めたい』
    だからおっさん臭いんだよ。
    『どこを?』
    返信が早い!
    『全部』
    『それじゃ分からない』
    『首とかおっぱいとかちんぽとかお尻とか』
    『うれしい早くして欲しい』
    くっ…! 駄目だつい想像してしまう。
    『沢山して』
    『舐められると気持ちいい』
    『乳首舐めて噛んで』
    『へそも舐められたい』
    『あそこも沢山して』
    『杉元さんの欲しい』
    『すごく大きい』
    『奥までもっと』
    『いっぱいかき回して』
    『そしたらすぐいっちゃう』
    もうやだぁ! 後ろを振り返ると尾形さんは嬉しそうに無言でピースサインを掲げていた。子供かよ。もう負けでいいよ…。俺は白旗を上げて一行だけ文を作って送信した。
    『勃っちゃったから俺の負け』
    また後ろからぶふぅと笑い声がした。くそ。
    ぴっと尾形さんからも一行送られてきた。
    『今夜9時に電話ください』
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