10月31日公演
盧笙が優しい　誕生日なので


ろ「はいどーもーどついたれ本舗いいますー」
さ「(手拍子しながら)♪バースデーハッピ〜バースデーハッピ〜バースデーハッピ〜ディア」
ろ「(さえぎって)いや気持ち悪！逆や逆！ハッピーバースデー！」
さ「えっおおきに〜ボク今日誕生日なんですよお」
ろ「ちゃうわツッコミや今のは」
さ「盧笙さんのツッコミはボクにとってプレゼントみたいなもんです」
ろ「やかましい！なんや今のバースデーソングは」
さ「♪バースデーハッピ〜」
ろ「不協和音やないか」
さ「不安になりますよねえ　生産雇用の減少、物価の低落」
ろ「その不況やないって！景気の話はしてない！」
さ「ボク、イチゴのってるんが良いです」

未定「自分、寝てへんのんとちゃう？」
「……へ？」

　普段ならぺろりと平らげる盧笙のお好みを残してしまったからだろうか、帰りがけメイクさんに塗ってもらったコンシーラーがはげてしまっているのだろうか、いつもより口数が少なかっただろうか。
　様々な可能性が脳裏をよぎる。簓はなんとかごまかせる方法がないかと頭をフル回転させた……が、すぐに諦めた。ここでどう言い逃れをしようが盧笙は聞く耳を持たないだろうし、そもそも最初から隠しおおせるものではなかったのだ。


　昔から、盧笙は簓の体調に目敏かった。誰にも言ったことのない偏頭痛も、ごく些細な風邪の引きはじめも、自覚すらしていない疲れや不調も、盧笙にだけは筒抜けだった。盧笙はそういうことに気がつくと、決まってギュウッと眉をしかめた。ひどく不機嫌そうなそれが怒っているのではなく心配してくれているのだと気がついたのは、あの雨の日の少し前のことだった。