ずっと一緒にいるために 瘴奸が貞宗の部屋に向かっていると、ちょうど常興が部屋から出てくるのが見えた。外は酷い雨で出陣は控えている。薄暗い廊下には澱んだ空気が漂っていた。
瘴奸は貞宗の部屋に入ろうとしたが、先ほど見えた常興が気にかかった。薄暗い中でもわかるほど常興の顔は青ざめていた。何かあったのかと思ったが、慌てた様子はなく、貞宗の体調が悪化したなどの理由ではないのだろう。何か嫌な予感がして瘴奸は常興の後を追った。
「常興殿」
呼び止めても常興は立ち止まらなかった。声が聞こえていないかのように歩き続けている。
「常興殿」
瘴奸は常興の肩に手を置いて止めた。常興は驚いたように振り返ったが、瘴奸だとわかると表情を緩めた。常興は貞宗が倒れてから日々表情を険しくしていたが、今は顔色が青いものの、不思議と落ち着いた表情をしていた。
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