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    さめいち

    原稿の進捗 絵の没、人を選ぶようなものを上げる用
    主に男女カプとか

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    さめいち

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    リド監♀小説
    監督生はいつもさめ煮が描いてる子の気持ちで書いてますが別に全然気にしなくていいです。監督生呼び統一。

    お付き合いもしてない6章後。ごはん作って食べるだけ。ヤマもオチもない。

    明日何食べる? 監督生は困惑していた。
     嘆きの島での一件をどうにかこうにか乗り越えて数日。無事に親分も帰ってきて半壊状態だったオンボロ寮は見違えた姿になって復活した。ライフラインが安定し急に生活水準が爆上がりし今までの生活マジでなんだったんだとちょっと泣いた。何はともかく快適な暮らしに感動しつつ今日の夕飯を作ろうと準備していた矢先、来客用のベルが鳴った。
     誰だろうか。同級生らの部活がもう終わったのか。とドアを開けるとそこには困り顔のトレイと眉間にシワの寄ったリドルがいた。リドルの髪は毛先から頭のてっぺんにかけて白いグラデーションがかっている。いつも目を惹く鮮烈な赤には程遠かった。

    「…というわけなんだ監督生。しばらくリドルを頼めないか」
    「ちょっとトレイ、ボクはまだ了承していないよ」
     トレイが監督生に困った笑顔で頼む横でリドルはなおも抗議を続けている。理由は良く言えばリドルの療養、悪く言えば隔離である。
     先日の嘆きの島での一件でリドルの保有する魔力はスッカラカンになった。一緒に生命力らしいものもいくらか持っていかれて髪の毛まで真っ白になった。しかし検査の結果しっかり寝て食べて休めば魔力も生命力も元の状態に戻ると診断され、少なくとも髪の毛が元の色に戻るまでは寮長としての仕事や授業を休むようにと指示された。
     が、今まで分刻みのスケジュールで動いてきたリドルにとって、唐突に降って湧いた暇というのはあまりにも酷なものだった。
     要は体の不調は特にないのに何もしないでベッドでゆっくり寝て休む、ということがリドルにはかなりの苦行だった。何かしていないと落ち着かない。ベッドの上で参考書を読み漁り、無理矢理にでも寮長の仕事をしようとする。そんなリドルにを見かねたトレイが今回監督生にしばらく彼を預かってくれないかと頼みに来たわけだ。とりあえず物理的にハーツラビュル寮から離せば寮長の仕事はできないだろう、と。
     ワーカーホリックか?と監督生は思った。自分ならめちゃくちゃ喜んでおやすみしてゴロゴロさせてもらうのに、とも思った。リドルは絶対怒るから言わないけど。

    「勉強はともかく寮長の仕事なら俺とケイトでどうにかするさ。リドルはしばらく休めって学園長から言われてるだろ?」
    「それはそうだけど体調は問題ない。だから授業に出られない分寮の管理を…」
    「でも魔法はまだ元通りになってないじゃかないか。このままだと治るものも治らないだろ?」
    「う…」

     なおも食い下がるリドルを休むなら完全に休んだほうが良いとトレイが諭す。それから監督生に向き直り再度頼めるか?と確認する。

    「まぁ、それは全然…別に大丈夫ですけど…」
    あっさりOKが出た。
    「なっ、キミ本気なの?異性を泊めるなんて!」
    「異性って言っても色々と何回も泊めてますしねぇ。部屋もいっぱいありますし」
    「えぇ…」

     ある時は避難所、ある時はVDCの合宿所として使われてきたオンボロ寮と監督生。普段も何故か勉強会やら昼寝場所やら夜の散歩コースやらなんやらに勝手に使われていたりする。セキュリティガバガバである。今更異性のリドル一人、しばらく置いておくのだってどうということはない。監督生は細かい事を気にしない質だった。というか諦めていた。

    「はは、そう言ってもらえて助かる。また今度お礼でも持って行くよ。リドルもゆっくり休むんだぞ。必要なものがあれば持って来るから」

     そう言ってトレイは勝手にまとめてきたリドルの荷物一式を手渡した。ちゃんと休まなくては治るものも治らない、それはそうだ。この件に関してはトレイが圧倒的に正しい。リドルはそれを渋々と受け取った。

     監督生はリドルを部屋へ案内し、合鍵を渡してまっすぐキッチンへ戻っていった。荷物を置いてきたリドルが談話室の方まで戻ると、キッチンからマスターシェフの履修中に随分聞いた音がする。
    「何か作っていたの?」
    「あ、はい。今日の晩ごはんです」
     手慣れた様子で材料を切っていく監督生の手元をリドルは後ろから意外そうな興味深そうな様子で観察する。
    「キミ、料理できるんだね」
    「そりゃまぁ…最低限は一応」
    「ふぅん…」
    「手伝ってもいい?」
    「え、いいんですか?」
    「いいよ。やる事もないし。これからお世話になるんだからそのくらいするさ。」
     ゆっくりしてもらう方がいいのでは、と監督生は一瞬考えたがやる事がないから落ち着かないんだろうな、と思い直す。
    「えっと…じゃあごはん炊いてもらってもいいですか?5…いや6合でお願いします」
    「6合!?多すぎない?!」
    「今日はエース達も食べに来るんです」
    「それにしても多くない…?」
    「育ち盛りですからね〜」
    「そう…」
     マスターシェフで炊飯の方法は教わったから炊くこと自体は問題ない。炊きたい分だけ洗米して炊飯器に入れて水をメモリぴったりになるまで入れてスイッチを押すだけ。いやそれにしても多くないか。リドルは戦慄した。戦慄はしたがここでは作っている監督生がルールだ。ルールたる監督生がそう言うのだから大人しく従う事にする。
     監督生はその間にどんどん作業を進めていく。野菜を切り終わると鍋にサラダ油を熱し、材料を入れて炒め始めた。野菜がしんなりしだすと水を入れ沸騰するまで待つ間に今度は冷蔵庫から豚肉を取り出している。筋を切って塩コショウを振って…よくもまぁレシピも確認せず、迷いもなく動けるものだな、とリドルは隣で感心する。自分がレシピとにらめっこしながらロールキャベツに悪戦苦闘していたのとは大違いである。
     洗米が終わり、水をメモリまできっちり入れてボタンを押す。ピーッと炊飯器が動き出し、リドルのやる事がなくなってしまった。
     そうこうしているうちに火にかけていた鍋が沸騰し、ボコボコと泡立ちだす。
    「何をしているの?」
    「アクを取ってます」
    「あく」
    「えぐみ?みたいなのです。取っとかないと美味しくなくなるので」
    「へぇ」
    「はい」
    「そっちの肉は油で揚げるの?フライパンでできるの?」
    「ですねー。後処理めんどいので揚げ焼きみたいなもんですけど」
     豚肉に衣をつけてフライパンで揚げ焼きする。ジュワーッと上がる音と匂いが部屋に充満する。
    「…え、もう油から揚げるの?どうして中まで火が通ったのかわかるの?」
    「見た目と勘ですね」
    「えっ」
    「まぁ最悪食べてみて火通ってなかったらレンチンすれば大丈夫ですし」
    「えっ」
    監督生は結構ズボラだった。
    「こっちはそろそろ…大体15分たったかな…っと」
     鍋の様子を見てカレールウを放り込む。ミステリーショップで割引してもらったマジカルカレールウ、1箱200円。適当に割ってボチャボチャ放り込む。
    「今の茶色い塊は何?」
    「カレーのルウですよ。見たことないですか?」
    「初めて見た」
     手持ち無沙汰なリドルの質問が横から事あるごとに飛んでくるが、監督生は気にせず質問に簡潔に答えて調理はどんどん進む。特に気にする事もなくリドルの好きにさせていた。

    「子分〜!今帰ったんだゾ!!」
    「うわ、めっちゃカレーの匂いする!腹減るやつじゃん」
    「ふな〜!いい匂いなんだゾ〜!!」

     入口から声がする。グリムとエースだ。
    「かんとくせー、部活で汗やばいしシャワー借りてもいい…って寮長?!なんでここに?!」
     ひょこっとキッチンに顔を出したエースが素っ頓狂な声を上げる。
    「何?ボクがいると何か不都合でも?」
    「い、いやぁ〜特に何も…ははは…」
    「リドル先輩は色々あったの。エース、シャワー使うならついでにグリムも洗ってきて」
    「ふな?!なんでオレ様も?!それにエースとなんて入りたくねーんだゾ!!」
    「昨日入ってないでしょ。入らないならグリムだけカツなしね」
    「それは困るんだゾ!!おいエース!とっととオレ様を風呂に入れるんだゾ!!」
    「変わり身早いし偉そうなの何なの?はいはいわーかったよ」
     ドタドタと嵐のようにシャワーへ駆け込んでいく一人と一匹。
    「監督生!全部用意してくれたのか?ありがとう!…って、ローズハート寮長?!お疲れ様です!」
    「…本当だ、リドル先輩お疲れ様っす。監督生、先に手間賃と材料費渡しておくぞ」
    「はいよー」
     シャワー空く前にテーブル準備してくる、と陸上部の2人。
    「監督生さん!お邪魔しまーす!」
    「わぁっ…すごいいい匂い!監督生サンが全部一人で作ったの?!」
    「ごはん炊いたのはリドル先輩だよー」
    「そうなの?あっリドルサンこんにちは!あれから体調は大丈夫ですか?」
    「こんにちは、リドル・ローズハートさん!バイタルに異常はないみたいだね、よかったよ!」
    「こんにちはエペル、オルト。あぁ、問題ないよ」
     僕達お皿持ってくるね、と戸棚の方へ向かう2人。あっちこっちでドタバタと、なんだか一気に場が賑やかになった。リドルはなんだか場違いな気がしてそわそわと落ち着かない気分になってきた。
     ピーッと音がなった。炊飯完了の音だ。


    「よっし、大体できた!お皿用意してー」
    「おー!」
     エペルとオルトがガチャガチャと重ねたお皿を机に置いた。オンボロ寮の食器は皆が不用品や自分のを持ち寄ったものなので形にも大きさにも統一性なんてものはなかった。
    「にゃっはー!!お待ちかねなんだゾー!!」
     お風呂に入ってほかほかふくふくになったグリムがいの一番に机に飛びつき、オレ様のお皿!と掲げてみせた。
    「ごはん自分で入れて持ってきてね。こつっちで盛り付けするから」
    「えっ」
     監督生の言葉にリドルは固まった。自分で入れるの?それってどのくらい?そもそもどの皿を使えば良い?
    「オレ様大盛り!!大盛り!!」
    「オレこの皿にしよーっと」
    「俺も今日は特に腹減ったな」
    「僕も大盛り!…にしたいけど…ヴィルサンにバレるとまずい…かな…」
    「寮長、どうかしましたか?」
    「いや、えっと…………………」
     1年生達はそれぞれサイズや形の違う皿を持って炊飯器から順番にごはんをよそっている。それがリドルにはとんでもなく難しい事に見えてその場に立ち尽くした。
     食堂では料理を注文すればきっちり1人分の量が盛りつけされた状態で出されていたし何でもない日のパーティーでもケーキやお菓子は1切れずつ切り分けられた状態で出されていた。リドルにはどうすれば良いのかわからず机に残っている皿と炊飯器を交互に見た。ボクはどの皿を使って何グラムのごはんをよそえばいいのだろう。
     残念ながらオンボロ寮に秤は置いていなかった。そもそも秤があったとしてもその後監督生からよそわれるカレーやトッピングの量だってわからない。全部わからないのに自分が食べられる適量なんて決められなかった。
     既に盛りつけが終わった1年生達はカツカレーに随分と興奮しているらしかった。さっきから「ヤッター肉だー!!」「オイお前のカツの方がデカくないか」「黙っていただきますしろよ」「先にサラダ食えって子分言ってたゾ」などなど騒ぐ声が談話室からリドルの耳にまで届いている。届いてきてはいるがリドルはそれどころではなかった。自分がどの皿を使いどのぐらいの量を入れるのが正解なのか、必死に考えていた。考えたとて答えが出る訳でもなかったが。リドルは完全に途方に暮れた。
    「先輩、何か困ってますか?」
     後ろから監督生が声をかける。ちゃっかり自分の分も盛り付け終わっている。リドルは監督生の方を見る。なんだか迷子の子どものようだった。
    「もしかしてカレーは嫌いでした?」
    「べつに、嫌いじゃないよ」
    「そうですか」
     自分の分のカレーを一旦机に置き、空の皿を1枚取る。楕円形で底が深めの真っ白い皿。それをリドルの方に見せた。
    「これ、今日からリドル先輩用のお皿にしますね」
    「え?あ、うん」
    「どれくらい食べられるかわかんないんで少なめにしときますね」
     困惑するリドルをよそに「リドル先輩用のお皿」にごはんを盛り、トンカツを乗せ、カレーをよそう。あっという間にカツカレーの完成。
    「どうぞ。食べきれなかったらそれでもいいです。ラップして置いといて明日とかにでも食べてくださいね。足りなかったらもう一回入れますし。あ、でもカツはもうないですからね。1人1枚なので」
    「わ、かった」
     自分用と称されたお皿に盛りつけされたカレーを受け取る。一緒にここの決まりというように色々付け加えられていく。リドルはそれを聞いているうちになんだか落ち着いてきた。ここはオンボロ寮で、監督生が管理をしている。ここではこの子がルールなのだ。それなら監督生の決めた事をルールとして従えばいい。リドルの中で落ち着いたらしい。リドルは少し肩の力がぬけた。


    「うっっっっま!!!やっば!!!」
    「監督生、おかわりあるか?」
    「ふな〜!カツが外がサックサクで香ばしくて、中からはじゅわ〜って肉汁が出てきて噛めば噛むほど美味いんだゾ〜!カレーをつけてごはんと食うともっと美味いんだゾ!!」
    「あ〜うま…部活終わりって腹減りすぎてマジで何でも食えるよな…」
     美味い美味いとがっつく同級生を眺めながら、監督生は「あともう1合炊いたほうが良いかも」と呟いた。リドルも隣で確かにと思った。6合って多すぎないかと思ったが確かにこれは足りなさそうだ。
    「監督生さん。僕、炊いておこうか?」
    「いいよオルト。足りなくなってから考える」
     カツカレーは普通に美味しかった。可もなく不可もなく。でも出来立てで、暖かくて、騒がしくて、なんだかホッとする味だった。リドルは空になった皿をじっと見つめた。なんだかすごく久しぶりに食事をとった気がした。本当に気がしただけ。
    「リドル先輩、食べ切れたんですね。おかわりは食べますか?」
    「…ううん、大丈夫だよ。ごちそうさま」
    「はーい」
     食べられてよかったです、と笑う監督生を見てリドルの中の何かがキュッとなった。
    「今日はグリムが無事帰ってきた記念って事でちょっと奮発したんですよね〜そしたらエースがオレらも全快祝いで食いたいって騒ぎ出して」
    コップをゆるく振ってくるくる回る水を見ながら監督生が言った。
    「今度は先輩が早く元気になるように食べたいもの作りますね。ちょうど休みですし。明日何食べます?」
    「か、考えておく、ね」
     リドルはこれからしばらく毎日こうして監督生が作ったごはんを食べるのかと思うとこそばゆいような、ついさっきお腹がいっぱいになったのにまたお腹が減るような、おかしな気持ちになった。
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    さめいち

    DOODLEリド監♀小説

    6章後のリド監+αがごはん作って食べるだけ。2日目です。山もオチもないです。無駄に長いです。
    明日何食べる?2日目

     リドルは頭を抱えていた。以前とは見違える程綺麗になったオンボロ寮の客室のベッドの上で。リドルが頭を抱える程の難問。それは、

    明日の夕食の献立である。

     今日から療養という名目でオンボロ寮にお世話になる事になったリドルは、監督生から「明日の晩ごはん食べたいもの考えといてくださいね〜」とゆるっと言われた。
     そうは言われたものの何も思いつかない。そもそも自分で食事の献立を考えるのは初めてではないだろうか、と考えながら気づいた。実家では母が朝食から夕食、間食に至るまで毎日の献立を摂取カロリーと必要な栄養素で考え、食べる量すらグラム単位で決められていた。食べたいものをリクエストをする機会なんてなかった_したとしても全て却下されるというのが正しいが_ので、自分で献立を決めるなんてしたことがなかった。学園で過ごすようになってからも自分で献立を決める機会はなかった。食堂にはあらかじめ決められたメニューが並んでいて、そこからいつもカロリーや栄養素をふまえて選んでいた。ハーツラビュルの何でもない日のパーティーでも、副寮長であるトレイを筆頭に担当の寮生達が何を出すかが考えられ、ハートの女王の法律に抵触していないか、品目が被ったりしていないかなどの最終確認をするくらいだった。普段もトレイが今日のおやつだぞと出されたものを食べていたのだ。なのでこれまでなんとも思っていなかったが、いざリドル一人で何もない状態から「何が食べたいか」を考えるとさっぱり何も浮かんでこない。何ということだ。本当に何も浮かんでこない。1から10生み出すよりも0から1生み出す方が苦労するとはよく言ったものだ。
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