夏 うたげのあと 夜半の大広間のあちこちに落ちている、もとい横になっている刀たち。赤ら顔で幸せそうに寝ている者、悪い夢にうなされている者。
その中で羽織姿の長谷部がうつむき口に手を当て、
「……気持ち悪い」
とうめくのを、燭台切は聞き逃さない。
「長谷部くん飲めないのにあんなに飲むからだよ。無理しちゃ駄目じゃないか」
勇気を出して声をかければ、しかめ面でこう返される。
「……仕方ないだろう。主のお誕生会だぞ、今日は」
確かに、いつになく杯を重ねる長谷部に主はご機嫌だった。こんなに飲めるとは知らなかった、いつも飲まないからという主に普段は控えているだけですよ、俺は主のお世話係ですからねといつもの主用スマイルで返す長谷部を疑いもしない自分たちの審神者の人の良さも、今日ばかりは少々恨めしくなると燭台切は思っている。
2270