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    kaigetu_sen

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    kaigetu_sen

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    ※無印時代・捏造たくさん
    怖い話をするキンベエさん

    貴銃士になる前→妖精みたいな存在。普通の人には見えず、ある程度自由に動き回れる。付喪神も似たような感じ

     お前さんら、食堂に集まって何を……、怖い話大会? そうか、あまり遅くまでやるんじゃないぞ。……怖い話をしてくれ? お前さんたちが話すんじゃないのか? ……話が尽きたと。ふむ、怖い話か。ああ、ひとつあった。……これはわしが作られて間もない頃の話だ。
     特にすることがなくて、そこら辺を散歩してたんだが、その途中、長い髪で赤い着物……、わしの母国の服だ、それを着た女性に声をかけられたんだ。着物は幼かったわしが見てもわかるぐらい本当に良いものだった。で、女性の話を聞くと、道案内をしてほしいと頼まれたんだ。……うん? ああ、よく気が付いたな。確かにおかしいな。人である女性が、銃の化身であるわしに声をかけるなんて。しかもこの時は、わしは貴銃士でも何でもない。それこそ妖精に近い存在だ。でも不思議なことにこの時は何も変に思わなかったんだ。幼かったからとかではなく、本当に気付かなかった。……いよいよ、怖くなってきただろう? さて、話を戻すか。どこまで話したか……、ああ、そうだ、道案内を頼まれたところだったな。その時暇だったわしは、もちろん案内した。目的地は……、悪い覚えていない。流石に数百年前だと、記憶もおぼろげでな。でそこに着いた後、女性と別れる前に「お礼に」と赤い紐がつけられた銀色の鈴をもらったんだ。鈴、見たことないか? 金属でできた丸い形状の道具でな。中に小さな玉が入っていて、振るとカランカランと音がなるんだ。その鈴の音には悪いものを払う効果があって、みんな魔除けとして身に着けていたりするな。だが、そのもらった鈴は、所々黒ずんでいて、音もガラガラしていて、とても綺麗とは言えないものだった。とはいえ、礼として渡されたものをいらないとも言えず、結局持ち帰ることにした。
     ただ帰るにはまだ早くて、海の近くの大きな岩に登って時間をつぶすことにしたんだ。いつもなら普通に登れたんだが、その日は途中で足を滑らせ、背中から海に落っこちてな。……そんなに笑わなくても良いだろう。流石にずぶ濡れだと遊ぶ気にもなれず、その日は家に帰った。帰った時のフルサト殿や他の付喪神たちの驚いた顔は今でもよく覚えている。……ああ、すまん。付喪神はわからんよな。わしらのような道具や武器の化身とでも思ってくれ。その後は特に何事もなく過ごした。いよいよ夜がやって来るわけだが……。その日は夜中に一度だけ目が覚めてな、その時にガラガラと鈴の音が聞こえたんだ。そう、女性からもらった鈴の歪な音だ。なぜ聞こえるんだろうかと不思議に思ったが、その時はそのまま、また眠りについた。
     次に目が覚めると、すっかり日が昇り、朝を迎えていた。うん? 何もなかったじゃないかって? がっはっはっ、まあまだ続きがあるから待て。でだ、また散歩していると、何やら海の方に人だかりができていた。何があったのだろうかと近づくと、……女性の死体が転がっていた。海から打ち上げられたのか、死体はずぶ濡れだった。死体は綺麗な着物を身に纏っていた。ああ、そうだ。昨日会った女性だ。昨日まで生きてた人間が死んでいたことに怖くなってな、慌ててその場から逃げ出した。その日はそのまま家に帰り、ずっと中で過ごした。
     そんなわしを変に思った刀の付喪神が「もしかして例の死体でも見たか?」と声をかけてきた。図星を突かれて、昨日あったことを全部話した。するとその刀は血相を変えて「お前、その鈴まだ持っているのか!」と詰め寄ってきた。わしは頷き、取り出そうとして、そこで初めて鈴が無いことに気が付いた。実は海に落ちた時に一緒に落としてしまったらしい。それを聞くとその刀は安堵のため息をついた。「死体(あれ)は神喰らい(かみくらい)だ。俺たち、神様を喰って力を得ようとする人間の成れの果て。本土の方でかなり有名な奴みたいでな。ついこの間、とうとう神の逆鱗に触れて殺されたと聞いていたが、種子島(ここ)に逃げてきたみたいだ。ただ目は潰されたみたいだな。あの死体、眼球がなかったしな。だからお前という獲物に、音の鳴る鈴を渡して夜中に見つけ出し、喰おうとした。でもお前が鈴を落としたせいで、あれは海をさまよう羽目になり、結果溺死したわけだ」
    改めて思い出してみると、確かに昨日会ったあの女性はぴったりと瞼を閉じていた。多分あの奥には真っ暗な空洞しかなかったんだろう。刀はやれやれと笑った。
    「お前本当に運が良かったな。じゃなきゃ、今頃、あれの腹の中だぞ」
     これで終わりだ。はっはっはっ、顔色悪いぞ? ……お前さんたちも貰い物には気をつけた方がいいぞ。運が良いことなんて、そう何回も起こることじゃあないからな。じゃあわしは寝るからな。おやすみ。

    補足
    結局、女性は何者?

    神喰らいと呼ばれる、神様を喰っていた元人間です(作者の創作)。神様の力を一部持っていて、キンベエさんなどの付喪神を見ることができました。
    あまりの蛮行にとうとう強い神様の堪忍袋の緒が切れ、殺されかけます。船に乗り込み、なんとか種子島まで逃げ、生き延びましたが、目を潰されてしまい、狩りができなくなってしまいました。そこで音の鳴る鈴を獲物に持たせて、眠っている最中に襲って喰おうとします(日中襲わなかったのは逃げられる可能性が高かったため)。ちなみに鈴には神喰らいの霊力が篭っており、遠隔操作で音を鳴らすことができます。鈴が黒ずんでいたのは、穢れた霊力が篭っていたからですね。
    計画はすんなり進み、まだ幼く弱い付喪神だったキンベエさんに鈴を持たせることに成功します。しかしキンベエさんは海に鈴を落としてしまいます。
    夜中になって神喰らいは、鈴を落としたことなど知らず、鈴の音を追って海に飛び込んでしまいます。海へ深く深く潜り、計画が失敗したことに気がつくも時すでに遅し。神喰らいは溺れ死んでしまいます。化物とはいえ、元は人間なので死体は残り翌日打ち上げられました。島の人々はびっくり仰天ですね。
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    kaigetu_sen

    DOODLE※無印時代・捏造たくさん
    怖い話をするキンベエさん

    貴銃士になる前→妖精みたいな存在。普通の人には見えず、ある程度自由に動き回れる。付喪神も似たような感じ
     お前さんら、食堂に集まって何を……、怖い話大会? そうか、あまり遅くまでやるんじゃないぞ。……怖い話をしてくれ? お前さんたちが話すんじゃないのか? ……話が尽きたと。ふむ、怖い話か。ああ、ひとつあった。……これはわしが作られて間もない頃の話だ。
     特にすることがなくて、そこら辺を散歩してたんだが、その途中、長い髪で赤い着物……、わしの母国の服だ、それを着た女性に声をかけられたんだ。着物は幼かったわしが見てもわかるぐらい本当に良いものだった。で、女性の話を聞くと、道案内をしてほしいと頼まれたんだ。……うん? ああ、よく気が付いたな。確かにおかしいな。人である女性が、銃の化身であるわしに声をかけるなんて。しかもこの時は、わしは貴銃士でも何でもない。それこそ妖精に近い存在だ。でも不思議なことにこの時は何も変に思わなかったんだ。幼かったからとかではなく、本当に気付かなかった。……いよいよ、怖くなってきただろう? さて、話を戻すか。どこまで話したか……、ああ、そうだ、道案内を頼まれたところだったな。その時暇だったわしは、もちろん案内した。目的地は……、悪い覚えていない。流石に数百年前だと、記憶もおぼろげでな。でそこに着いた後、女性と別れる前に「お礼に」と赤い紐がつけられた銀色の鈴をもらったんだ。鈴、見たことないか? 金属でできた丸い形状の道具でな。中に小さな玉が入っていて、振るとカランカランと音がなるんだ。その鈴の音には悪いものを払う効果があって、みんな魔除けとして身に着けていたりするな。だが、そのもらった鈴は、所々黒ずんでいて、音もガラガラしていて、とても綺麗とは言えないものだった。とはいえ、礼として渡されたものをいらないとも言えず、結局持ち帰ることにした。
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