雄鶏は独り空で鳴く「俺はこのまま基地に戻って今までと同じように過ごすから、マーヴもそうするといいよ。前みたいに俺がいなくても生きていけたんだし、願書の件はまだ許せないけどでも、でも俺はマーヴを憎むのを止めるよ。だから」
マーヴは俺に構わずに家に帰りなよ。そう言うブラッドリーは確かに笑っていて、頬はグースが手にしていたバラの様に赤く色づいて、眉は優し気に下がって僕の知る最後のブラッドリーの笑顔そのままだったのに、その瞳は力強く僕を抱き締めてくれたあの輝きは無かった。
そこにあったのはただ凪いだ海の様に、誰もを拒む空の様な色をした瞳。空ではブラッドリーの存在を感じたし、彼の心が燃えているのが分かった。あの時僕たちはともに飛ぶ僚機でパートナー。その絆を感じたのに、今の彼からはそれらがすべて消え失せて、僕の知らないブラッドリーがいた。
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