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    霧(きり)

    腐向けあります

    マリオ/マイイカ・crイカ中心
    ジャンルごちゃ混ぜ

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    霧(きり)

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    マイイカの短編集も上げたのでお知らせさせて下さい。いくつかピックアップして載せておきます
    全文【https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=17115747

    ##マイイカ
    ##ss

    15min.writing マイイカ版まとめ1:寝る前に君と

    白い夜

    「うぅ〜っ、さむ……なぁきりゅー、ほんとに去年もこうやって過ごしてたの?」

     カイはマグカップを両手で包みながらこたつにやってきた。ストーブも何も付けていない部屋は驚くほど冷える。こたつに潜り込むとふるりと全身を震わせた。既に飲み物を用意していたキリュウは先にこたつに入っている。正面にいるカイをちらりと見、キリュウは頷いた。

    「うん」
    「よく耐えられんなぁ」
    「慣れた」

     キリュウは湯気のたつマグカップにしつこいほど息を吹きかける。おそるおそるカップを傾けるが、びくっと肩を震わせてカップを戻した。

    「まだ熱かったか」

     後から来たにも関わらず、カイは平気そうに中身を口に入れている。キリュウは羨ましいのか恨めしいのか分からない目でそれを一瞥すると、窓の方に視線を移した。
     おもむろにこたつを出ると、窓に近寄り、落ち着いたイエローグリーンのカーテンを少し開けた。

    「どうしたの?」
    「雪、降ってないかなって」
    「降ってた?」
    「いや」
    「なーんだ」

     残念そうにそう言いながら、カイはこたつを出た。緑色のマグカップを片手に、キリュウのそばに立つ。

    「そろそろ飲めるんじゃない? 飲んで早く寝ようぜ」
    「ん、さんきゅ……明日なんかあったっけ?」
    「ないけど」
    「じゃあ別に急がなくても良いだろ」
    「昨日こたつで寝てたヒトが居たからなー」

     うげ、とキリュウは目を逸らした。

    「途中で移動したじゃん」
    「風邪ひくだろー! 落ちる前にさっさと寝ようぜ」

     わかったよと返事をする代わりに、程よくぬるいホットミルクを飲み干した。

    〜〜〜〜

    17:勝ち筋を貫け


    殺された音

     残り45秒。カウントは32対46。こちらがリードはしているが、ホコは相手の陣地にあり、味方は一度オールダウンしてしまった。完全にあちらの攻めになった上に、守るにしても少々余裕のないカウントである。ここチョウザメ造船は、高台が多く守りやすいが、侵入経路も多く攻めやすくもある。攻守激しくなるステージである。
     復活したサキは、自陣側にある高台に急いだ。あそこを取られると、一気にカウントが進んでしまう。どうにか、完全に取られる前にたどり着くことが出来た。チーム内の最長射程として、砦とならねばならない。その間に、味方は中央まで出ていた。先程オールダウンはしたものの、その際敵もまた半数落ちていたことから、攻めに入りきれなかったようだ。
     スペシャルゲージは現在半分弱と言ったところ。だが、このジェットスイーパーのスペシャル、マルチミサイルは放ったところで確実に仕留められるものではない。運が良ければ倒せるかもしれないが、おそらく時間稼ぎ程度になるだろう。
     自分が時間をかけて敵を止める間に味方が……コウが、切り込めるかどうか。それが、決着の鍵。彼は今自陣から潜伏しつつゆっくりと移動しているようだった。
     上手く足止めするためにも、まず、敵を探した。1、2……中央で味方と交戦している。もう一人はホコを持っている。
     あと一人が見当たらない。マップを確認するも、映っていない。どこに潜伏しているのか。マルチミサイルはまだ溜まらない。サキは一度インクに潜り、静かに辺りを見回した。どこにいるのか。落とすならば自分からだ。長射程が落ちれば、一気に進む。敵もそれを分かっているはず。ドクドクと脈打つ心臓を抑え込む。
     その時、やられたというシグナルが響いた。コウの声で。彼は自陣側にいた。つまり、自分の近くに。さらに脈打つ心臓が耳を覆い尽くさんとする中、微かにインクを泳ぐ音が聞こえる。
     この壁を伝ってくる!
     一か八か、サキは高台から自陣側に向かって飛び出した。ポイズンミストを投げつければ、誰かが引っかかる。姿を表したのはローラーだ。空中に投げ出されたスプラローラーは縦に振りかぶった。そのインクはサキの体を叩きつけるが、芯から少し逸れてやられるには至らなかった。
     一歩早く着地したサキはジェットスイーパーのトリガーを引く。回復しなかったのは、間に合わないと踏んだからだ。次、少しでもインクがかすればやられる。こうなったら相討ちに持っていくしかない。サキは踏ん張り照準を合わせる。降ってくるイカガールが再びローラーを振ろうとするが、そのローラーは空回りした。
     そのことに気がついたガールは悔しそうに眉を寄せながらインクを撃たれ、爆ぜた。自分もインクギリギリの中打ち勝ったサキは、大きく息を吐いた。彼女のインクがなくなっていたのは、コウと交戦した時に消費したインクが壁を伝う間に回復しきれず、ポイズンミストで更に奪われてしまったためだろう。
     コウがいなければ、コウの声がなければ、きっと真っ先にやられていた。早々に復活し、スーパージャンプで飛んできたコウの背中を叩く。コウは一瞬顔を綻ばせ、インクを泳いで行った。
     試合が延長戦に入る。さぁ、ここからが正念場だ。コウたちが進めてくれたカウントを守りきらなければ。守りは長射程の仕事。それに、後輩の手前かっこ悪いところを見せたくはない。
     額についた敵インクを拭い、サキはこの勝ち筋を貫くべくインクの海に消えていった。

    〜〜〜〜

    21:バレンタイン

    バレンタイン

     数日前、フウはパトロールの終わり際に日付を指定されて呼び出しをくらった。二号に何の用だと聞き返せば、いいから、とはぐらかされる。面倒だという気持ちが顔に出ていたのか、数分で終わるけん、などと言う。数分であることを念押しして、約束を交わした。
     今日がその約束の日だ。この後、バトルに行くつもりでいつものギアを着てきた。まさかパトロールなんてしないだろうからと思ってだ。いつも通りマンホールをくぐり抜ける。シオカラ亭には、いつも通り、一号と二号が座っていた。いち早く気がついた一号が手を振る。

    「あっ! 四号ー! 待ってたよー!」
    「いらっしゃい」
    「なんの用」
    「あはは、四号はせっかちさんだね〜! 今日が何の日か分かってる?」
    「は?」

     パトロールもない日に呼び出しておいて何なのだ、と眉間にシワが寄る。二号は一号をなだめつつ苦笑した。

    「まぁまぁ、ちょっと渡したい物があったんよ。来てくれてありがとね。ほらコレ」
    「アタシからも〜! ハッピーバレンタイン! 四号!」
    「……は?」

     フウは拍子抜けした。ポカンとしたまま、イカホを取り出し、日付を確認する。今日は二月十四日だった。

    「受け取ってくれないの?」
    「甘さ控えめにしたんだけど……チョコは好きじゃない?」
    「……もらう」

     ピンクの可愛らしい包みと、落ち着いた緑色の包みをそれぞれ受け取る。フウは手に取ってなお、なんとも言えない表情を浮かべていた。

    「アハハ、四号はこんな風に呼び出されたことなかったかなー?」
    「こらアオリちゃん」
    「……」

     認めるのは癪だが一号の言う通りだった。そもそもこんなイベントに微塵も興味はないが、こんなナリなので女子どころか男子だってそうそう近寄らない。チョコなど貰った試しがなかった。くれたのは妹ぐらいだ。しかも、近頃は彼女からだって貰っていない。

    「ふふ、お返し期待してるよ、四号」
    「そうそう! 三倍返しの法則だよ!」
    「そんな法則知らねぇよ」
    「今知ったでしょ! 来月よろしくね!」

     盛大にため息をつく。

    「用事ってこれ?」
    「うん」
    「あっそ。じゃあ帰る」

     一号は気を害した様子もなくからからと笑った。

    「あはは! 四号ったら反応うすーい!」
    「フン」
    「バイバーイ!」

     踵を返し、足早にマンホールに向かう。しかし、その途中、ふと足を止めたフウは振り返る。

    「大したもんは買えねーからな」

     どーも、と小声で付け足して、今度こそ帰っていた。それを見届けた二人は顔を見合わせて笑い合う。

    「ふふ、ああいう所があるから憎めないんよね」
    「ねー! お返し楽しみだなー!」
    「その前に、美味しく食べて貰えるといいけど」
    「オハギ食べてるぐらいだし、大丈夫でしょ!」
    「せやね」

     二号は楽しそうな一号を見て笑みを深めた。

    「あっ! そうそう、アタシ、ホタルちゃんにも買ってきたんだよ! 一緒に食べよ!」
    「そこはくれるんじゃないんね」
    「だって美味しいものは一緒に食べたいもん!」
    「も〜、アオリちゃんたら」

    〜〜〜〜

    25:3枚目のCD

    彼女が愛した借金

     突然、電子音が鳴り響く。通り抜けようとしていた体はバーに阻まれ小さく跳ね返った。
    『残高不足です』
     機械の声がそう告げた。
    「エッ」

     ビクッと肩を震わせたイトは後ろを振り返る。並んでいたイカとサングラス越しにバッチリ目が合う。すみません、と謝って列を離れた。
     さっき一斉に向けられた視線が、未だに体を刺しているような気がした。考えすぎだろうが、実際は誰も見ていないのだろうが、チラチラとこちらを見られているような錯覚がまとわりつく。
     気が抜けてしまったのだろうか。ICカードのチャージ機に向かいながら、うう、と小さく唸った。
    (地下にいたときだって、残高には気をつけていたのに……)

     ふと視線を移せば、そこにはテンタクルズの大きなポスターが貼ってある。彼女たちには本当に良くしてもらった、と感謝の気持ちが蘇る。

    『ハチー、残高は足りてるかー? 足りないようならアタシが貸すからな! 遠慮せず言えよ!』
    『センパイ、なんて頼もしい……! 8号さん、クリアが難しいようであればワタシもお力添えしますからね!』

     結局、借金をすることも直接的な力を借りることもなかったが、その言葉だけで、どれだけ心の支えになっただろう。なにかお礼をしなければ……。
     そう思いながら慣れた手つきで画面を操作し、カードに入金する。
     そうだ、2人のCDを買おう。イトは今度こそ改札へ向かった。
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