子狐が子蛟を拾った話小さい子狐は、自分のしっぽを抱きしめながら空を眺めていた。小さな手からはみ出るふわふわの毛が、風にそよぐ。
その子狐には尾が九つあった。普通の狐は一本しかないはずなのに、九本もある。おまけに毛並みは老狐のように白かった。そのせいで、子狐はいつもひとりぼっちだった。
仲間からは除け者にされ、たまに優しく声をかけてくれる者がいれば、それは恐ろしい下心を持っていた。
子狐は、良くも悪くも人目を引いた。
だから、自分を守るために生まれた故郷の山を離れることにした。未練を感じるほど、優しい場所ではなかった。この場所でなくても生きていける。もっと住み良い場所を探して、旅に出よう。
そうしてあてもなく彷徨い続け、山を越えて谷を超えて小さな足で歩き疲れて休憩中であった。
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