それはとても大切なものヌヴィレットの手にある一つの懐中時計。
これはかつてフリーナがくれたものだ。
『最高審判官になったのだから持ち物も高価なものがいい。というわけで僕からのプレゼントだ』
そう言って自信満々に出てきた小包の中に入っていたのがこの懐中時計だった。
デザインは細やかでクロックワークマシナリーによって的確に時を刻む懐中時計。
ヌヴィレットにとって、この時計はフリーナと過ごした大切な時間を刻んできたものでもある。
しかしだ。今日、懐中時計を開くと精密に時を刻んでいた時計が止まっていた。
形あるものは壊れるのだとヌヴィレットだって知っている。だがこの懐中時計が止まったことはヌヴィレットにとってフリーナと刻んだ時を奪われたようなそんな気がしてしまい、心が落ち着かなくなった。
3261