体調の悪い日電磁波の乱れで磁気嵐のようになっている。どうやら数日は続くらしい。なぜ今言うかというと、身体がデータである俺を含む他の奴らに影響が出るからだ。コピー元であるあいつは生身の部分があるからマシらしいが。俺はと言うと、めちゃくちゃに影響が出ている。コードを繋いでいてもデータが来ない。かろうじて繋いでいるおかげで姿は保っている。だが身体は制約が発動した時のように不自由だ。
そして、今とても困っていることがある。
「…なんで、そっちが泣きそうな顔してんの」
「だってぇ…」
コードに繋ぎっぱなしの俺の頭をずっと撫でている、スイ。辛くないか?痛いとこはないか?とずっと心配そうにしているのだ。
「大丈夫だって…磁場嵐がおさまれば元に戻るってあのカタコトも言ってたじゃん…」
「言ってたけど…ハイトが苦しそうなの見てられないし…」
「もー…心配性」
そう言うと、向こうはぐっと言葉を詰まらせる。この程度では消えたりはしないんだけど、よほどトラウマになっているらしい。気持ちはわからない訳じゃないが、どうにも自分のこととなると無関心になる。
「…手、握って。そばにいて」
「居るよ、ずっといる」
「お昼はあまいのがたべたい」
「動ける?無理だったら食べさせてやるから」
「頭撫でて」
「もちろん」
「あとキスもして」
「うん。…うん?」
「よっしゃ言質とった」
「それはずるくなぁい」
「だってスイ、うんって言ったもーん」
ズキズキと鈍く痛む頭のまま笑えば、恐る恐る額に口付けられる。ばちり、と俺の感情に合わせて電気が走る。
「こっちじゃないの?」
そう言いながら口布のない唇を撫でる。まるで火がついたように真っ赤になるものだから、げらげらと笑う。
「げらげら…うー…」
「痛い?」
「ちょっと痛い」
「今日は大人しくしていようなぁ」
「ん」
なるほど、本で読んだ看病シチュエーションとはこういうものか。口に出したらまたスイに本を隠されそうなので言わないでおこう。本はそこにあるから読むだけなのに、なぜ隠されるのか。これを言ったら年齢制限が!とかなんとか言われるのでまた黙る。
「そばにいてな」
「もちろん」
その言葉に、ようやく頭の痛みがとれた気がした。