ヘルメットはオレンジ色「わぁ~~っ! 先輩~ほんとに来てくれたんすかー!」
「……今日だけだからな。今日だけ」
自動扉の開閉と共に電子音の鐘の音。少しだけ調子が外れていて、明はその音にひそかに哀愁を感じていた。
ひくりと鼻を動かせばアルコールと、油と食べ物の匂い。それから…恋人が苦手としている煙草の匂い。そして薄い、甘いにおい。
それらがまとわりついて、明は器用に片の眉だけを上げてふんと鼻を鳴らした。
「信、お前ぇには随分借りがあるからな」
「いっっっぱい恋愛相談乗りましたからね~」
「……っ、だ、だからこーして来てやったんだろ!」
「わひゃっ! いきなり大声出さないでくださいよ!」
「ンだよその悲鳴」
「おー! 明、やっと来たかー」
「~~ッス」
4862