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    itokiri

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    itokiri

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    イデ監
    💀が青リップドッキリしかける話

    ##イデ監

    油断してるのが悪いんだよ イデアの唇が青いのはリップを塗っているののだと思っていた時期が監督生にはある。
     初めてキスをされた時にはすでに彼の唇が自前であることはわかっていたけれど、己の唇に指で触れてみても、その指先に色が移ることはなく、むしろ「え、な、なにその反応、い、嫌だった?」とぐさぐさとなにかが刺さってうっすらとイデアを泣かせてしまい、理由を説明して納得してもらうまで少し時間がかかったし、溜飲を下げるためにもと「君からちゅーして」ときた。彼は溜飲を下げるためと言っていたが、そんなのとっくに腹の底まで下がっていたはずなのだ。ニヤニヤしていたし。
     監督生はフルフルと数ヶ月前の記憶を脳内フォルダにしまい込み、隣を歩いているイデアを見上げる。
     珍しく生身でいる。購買に用事があったからとかなんとか。
     鏡舎に向かう彼とは後少しでお別れだ。
     監督生はイデアの服をちょんとつまんでしまった。

    「あ……えっと」

     すぐに手を離したけれどその手をぱしりと掴まれて「ん?」と柔らかな表情が逆光の中でもはっきりと見えた。
     揺らめくサファイアがとても美しい。
     触れたい……その思考を予鈴が咎めている。

    「も、もう、行かないと……」
    「そだね」

     指先が繋がれたままだ。

     もぞもぞも唇を甘く噛んで、視線があっちこっちへと彷徨う。
     なにかを待っている視線と、研究対象を観察する眼差しは少し似ている。

    「キスしてって、言ったら……してくれる?」

     誘導されているのはわかっているのに強請ってしまう。

    「もちろん」

     右手が監督生のサイドの髪を耳にかけ、そのまま頬を撫でて顔を寄せる。
     ぴったりと重なった唇は柔らかくてひんやりとした薄い皮の向こうにほのかな体温を感じた。

    「またね」

     右手がするりと離れていって、彼は振り返らずにさっさと行ってしまった。
     ひらひらと手を振る監督生は、足が地面についていないような感覚になりながら、自分の教室へと戻る。
     そしてその道中、妙に視線が顔に集まっているのが不思議で、もしかしてなにか顔についているのか……いや、ならさっきイデアが指摘してくるはず。
     ということは相当浮かれた顔をしている⁈ となり、恥ずかしくなってその場でスマートフォンのカメラを起動して確認した。

    「なっ!」

     監督生が真っ赤になっているのを遠隔で見ていたイデアは「イエス! 決まった!」とイタズラを成功させて大喜びしてガッツポーズをしている。

     監督生の唇はイデアがこっそり自分の唇に仕込んでいた青いリップの色が移り、ほんのり青く染まっていた。
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    kazeaki_twst

    MAIKINGアズ監🌸「戻れない日々の続きを歩いて行く」
    前作の「星が降る夜に」の続き。
    その日は、本当にいつもと変わらなかった。
    四年生になり、いつもと同じように研修先からグリムと帰宅し
    「グリムーっ!ちゃんと外から帰ったんだから、手を洗いなよーっ!」
    なんて言いながら、自分の部屋で制服を脱いでいた。外は、すっかり暗くなり秋らしく鈴虫か何かの虫が鳴いている。
     そして、ふと鏡に目をやると首元のネックレスが光った。そこには、恋人が学生時代に使用していた魔法石───を再錬成して作った少し小ぶりの魔法石がついていた。監督生の頬が思わず緩む。
     これをプレゼントされたのは、ほんの数日前のことだ。

    「監督生さん、これをどうぞ」
    いきなり差し出された小さな箱を見て、監督生は首を傾げた。目の前は、明らかにプレゼントとわかるラッピングに、少し緊張した表情のアズールがいた。
     監督生は、何か記念日であっただろうかと記憶を辿り───思い当たる事もなく、思い出せない事に内心焦った。当然、自分は何も準備していない。
     しかし、このまま何も言わずプレゼントに手をつけなければ、きっとアズールは傷つく。いつも余裕綽々とした態度で、若年だと侮られながらも学生起業家として大人たちと渡り合う深海の商人── 2244