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    itokiri

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    itokiri

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    イデ監
    大きいのが好きなの?小さいのが好きなの?どっちが好きなの?な話

    ##イデ監

    大とか小とか イデアは監督生に髪を引きちぎられている最中である。
    「いだだだだだッ! タイムタイム! わかった、謝る。謝るからッ!」
     些細なことで喧嘩したのだ。もうすでになんで小競り合いが起きたのかはどうでもよくなっており、監督生の中でのゴングは「こんのペチャパイ!」で鳴り響いたのだ。
     普段から大抵のことでは怒らないし「そうなんだ〜」と素直に聞いて、受け流したりもできるというのに、こればかりは許しがたかった。
     なぜなら事実、監督生の胸は慎ましやかだから。
     眉を吊り上げ真っ赤な顔で「むきーーっ!」と怒り、イデアの炎髪をぶちぶち引き抜く。
     タイム。と休戦の申し出にも最後の一むしりを忘れず、小さな手の中に炎の消えたイデアの青い毛髪が握り締められていた。

    「ハゲるわ!」
    「ペチャパイなんて酷いこと言う人なんてハゲればいい!」
    「いいわけあるか! 君こそ彼氏がハゲでいいの? いやでしょ?」
    「別にいーですよーだ。胸がない彼女の隣には髪がない彼氏で十分じゃないですか」
    「その理屈おかしいだろ。頭だいじょぶそ?」

     ばっ! と監督生がイデアの髪にまたしても手を伸ばしてきたので「わかった。言いすぎました。謝るから」と手首を掴んでどうにか阻止。

     それから二人は立ったままはなんだからとどぞどぞと変な空気で片やベッド片やワークチェアに腰掛ける。
     無言が続き、痺れを切らしたのは監督生だった。

    「男の人は大きい方が好きですもんね」

     この発言にイデアの脳内ゴングが鳴り響いた。

    「君は自分の魅力をわかっていない! さっきのは売り言葉に買い言葉でペ……禁じられた呪文を口にしてしまったけれど、ペ……二つ合わせてだいたいりんご一個分くらいの重さ、果物で例えるならオレンジかな。僕の手では余裕で掴めてしまう控えめで愛らしいサイズ! わかります? 掴んだ時、手にあまらないんだよ。指の隙間からこぼれるとかそういうのはない。僕の息子なんて挟めっこないそのぺ……控えめなおっぱい! 可愛い! 出来ないことは多いよ! 仕方ないじゃん! ペ……慎ましいお淑やかなおっぱいなんだから! でもいいんだよ! できないってことはそれだけで価値があるわけ! でかければいい? 違うね。育てることはできるけど留めることは難しいんだよ。その希少性が君なんだ! そこで止まっちゃったんじゃない。君はそれが完成系なんだよ! 誇っていい! 胸を張って! そのちっぱいを誇れ! そして男はみんなデカい胸がいいと思っているその安直な思考を今すぐに捨てろッ!」

     ぶわっと赤く染まった髪が燃え広がる。
     肩で息をしながら言い切ったイデアに対し、監督生は「は、はい。ご、ごめんなさい」と謝っていた。
     言っていることの大半はよくわからなかったし、なんだか途中途中で気になる発言もあったりとしたはずなのだが、それどころではないほどの圧を浴び、完全に押されてしまっていた。

    「ふう……わかればいいよ」

     立ち上がっていたのを椅子にどかっと腰掛けて気持ちを落ち着け、はーと息を吐き出した時、デスクの上の棚からぽすん。と雑誌が落ちてきた。

     イデアは瞬時にその雑誌を引き出しに仕舞おうとしたが、その怪しい挙動に女のカンが働いた監督生がイデアから雑誌を取り上げる。

     ナイスバディーボンキュッボンな女性が表紙を飾っている青年雑誌だった。
     最新号ではないので、気に入っているから取ってあるというのがわかる。

    「……これ」
    「……な、なに」
    「スタイルすごくいいですね。Hカップにメロメロ……って書いてあるんですけど」
    「ほ、ほんとだ」
    「ねえ」
    「ヒッ」
    「どういうことですか? 喧嘩売ってますよね」
    「ち、ちが……こ、これは、き、君とお、お付き合い、する、ま、ま、前の、と、というか、きょ、去年同じ部屋だった子が、せ、餞別にと、く、くれたもので、も、もらいものだし、す、捨てるのもな〜……フヒ」
    「なにわろとんねん‼︎」
    「いだだだだだだっ! か、髪引っ張るのやめてぇっ」

     元々イデアは大きい胸が好きだった。というよりもお姉さんタイプというか、年上が好きだったりというのもある。
     リアルで好きになったというより、推しているアイドルグループも年上であるし、好きなアニメキャラもだいたい年上お姉さんキャラが多い。少しアンニュイだったり、ミステリアスだったりするセクシー担当なキャラクターには大変お世話になったのだ、色々な意味で。

    「す、す、好きになる子と、理想のタイプは違うことあるでしょっ」
    「やっぱり大きい方が好きってことじゃないですか! 裏切り者ッ!」
    「い、今は違う。ほんと、嘘じゃない! 君が好きなんだよ。大きいとか小さいとかはこの際どうだってよくて、君についているものがたまたま小さいってだけで、そんなの飾りで、もうちょっと大きければなとかもない! 君そのものに恋してるんだよ!」

     監督生はイデアの髪から手を離し「嘘なんてついてません」という真っ直ぐな目で見上げてくるイデアをじとっと端から端まで疑りの眼差しを向ける。
     先程デカい声かつ早口で熱弁していた禁じられた呪文についての話は、過去の誤魔化しかもしれないという線もちらついてきており、監督生はイデアの本心を信じきれていない。
     確かに嘘ではないだろう。が、絶妙に事実を隠匿していそうであるのだ。

    「例えば、おっぱいが大きくなる魔法薬をたまたま私がかぶったとして、肩が凝ってしまうので早く解毒剤作ってくださいってお願いしたら、イデア先輩はすぐに作ってくれますか?」

     イデアは危うく目を逸らしそうになるのを瞼をかっぴらく事で耐え忍び、表情筋に緊張を走らせる。早く答えろ! と脊髄反射に期待したというのに、脳が思考を始めてしまった。
     たぷんたぷんと揺れるHカップのおっぱい。重さは二つ合わせて約三キロ。これは新生児の重さと大体同じ。ということは自分の手に彼女のパイオツという赤ちゃんが乗るということ。幸福の香りしかしない。現実の彼女のおっぱいではささやかな渓谷しか生まれることはないけれど、茨の谷もびっくり仰天な深淵なる谷底が僕の手に余るモノで爆誕するということ。
     そうなってくるとそこに僕のナニが……

    「っ、ご、五分……い、いや三分、ちょうだい……ちょっと、落ち着くために……」

     俯き加減になったイデアのつむじをじとっと見下ろしながら「はい」と冷えた声で了承する。
     きっかり三分後、イデアは顔を上げ「魔法薬の効果なんて一時的だし自然と戻るんじゃないかな」とサラサラ答えた。
     監督生は片眉を吊り上げ腕組みしている。
     腕を組んでいるポーズをしても、胸はあまり強調されてはいない。

    「……どこ見てるんですか」
    「ひっ、へ? え、な、なに……どこも見てませんが?」
    「おっぱい見てましたよね」
    「じ、自意識過剰〜。そ、そんな男が常日頃おっぱいばかりに目を向けるわけないでしょ? た、たまたま視線が胸元にいっただけで、それをおっぱい見てましたよね? 冤罪なんだが?」
    「絶対見てましたよ」
    「はーやだやだ、見てませんよ。第一君の胸どこ? 見当たらないけど?」
    「はい?」

     またしても売り言葉に買い言葉。イデアは監督生に髪を掴まれ毛をむしられることになる。

    「ったいなぁ! 毛をむしるなって!」
    「ない苦しみを味わってほしい」
    「だーかーらー希少価値高いからいいじゃんって言いましたよね? お話聞いてた〜?」
    「でももし大きくなったらみたいな想像したでしょ」
    「そりゃするでしょ! 今できないことをその瞬間はできるんだからさ! あーわかった。そんなにちっぱいが嫌なら育ててあげるよ。ほらこっちおいで」
    「いやです! 触らせたくない」
    「はあ⁈ それは聞き捨てならんのだが?」

     イデアは手をわきわきとさせながら立ち上がり、逃げる監督生を追いかける。
     狭い室内かつ物が乱雑しているので、地図が頭に入っていない監督生はタコ脚配線の餌食となり、イデアに胸を掴まれる形でキャッチされることとなり、屈辱的な体勢で胸を背後から揉まれている。

    「じょ、女子だってさ、ちんちん大きい方が〜とか思うでしょ。それと同じなんでは?」
    「わ、私先輩しか、し、知らないし……そ、それにお、大きいとか小さいとか、関係ないです。せ、先輩と、す、することに意味が、あってですね……と、というか、できればもう少し小さい方がお腹苦しくないかもしれなくてですね……」
    「……へぇ……フヒ。ヒヒッ……君って男のツボ抑える天才なんでは? フヒヒッ……でもザンネーン、拙者のちんちんは今の君の発言のせいで大っきくなっちゃいましたー。責任とって小ちゃくしてくだーい」
    「っ、〜〜ッ変態! すけべ!」
    「はいはいその通り〜。いっぱいモミモミして君のは大っきくちまちょーね〜」

     育乳マッサージのかいがあったからか、少しだけ胸の感度が上がったけれど、監督生の胸がそれ以上育つことはなかったとか。
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    MAIKINGアズ監🌸「戻れない日々の続きを歩いて行く」
    前作の「星が降る夜に」の続き。
    その日は、本当にいつもと変わらなかった。
    四年生になり、いつもと同じように研修先からグリムと帰宅し
    「グリムーっ!ちゃんと外から帰ったんだから、手を洗いなよーっ!」
    なんて言いながら、自分の部屋で制服を脱いでいた。外は、すっかり暗くなり秋らしく鈴虫か何かの虫が鳴いている。
     そして、ふと鏡に目をやると首元のネックレスが光った。そこには、恋人が学生時代に使用していた魔法石───を再錬成して作った少し小ぶりの魔法石がついていた。監督生の頬が思わず緩む。
     これをプレゼントされたのは、ほんの数日前のことだ。

    「監督生さん、これをどうぞ」
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     監督生は、何か記念日であっただろうかと記憶を辿り───思い当たる事もなく、思い出せない事に内心焦った。当然、自分は何も準備していない。
     しかし、このまま何も言わずプレゼントに手をつけなければ、きっとアズールは傷つく。いつも余裕綽々とした態度で、若年だと侮られながらも学生起業家として大人たちと渡り合う深海の商人── 2244