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    itokuzu_maki2

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    アズ監♀
    アズ監webオンリー「紺碧の瞳に恋して」webアンソロ「二人きりの誕生日」をテーマに書きました。微妙にユニオングルビネタ有ります。

    ##アズ監

    タイムイズマネー 口約束は嫌いだ。不確定だから。証明できないから。
     だというのに「忘れないでくださいね」そう言ったのだ。この僕が。自分の意思で。
     ああ、もしかしたら期待してなかったのかもしれない。
     霞のように目の前から消えるかもしれない。流れる水のように止まらないで、いつの間にかどこか遠くへ行ってしまうんじゃないか……なんて。
     僕は大人になりたかった。
     でもあの人は子供のままでいたかった。
     時間が経つ事を恐れているように見えた。
    「今年もお祝いしてくださるんでしょう?」
     小さな背中に問い掛ければ、黒檀の瞳が僅かに揺れた。
     哀愁の混ざる優しい色だ。
     子供のままでいたいはずなのに、彼女はどんどん大人になっていく。
     置き去りにされているのは僕の方だ。
    「触れてもいいですか?」
     その断りの言葉さえ紡げない。
     握りしめた拳を緩めて、眼鏡を押し上げて誤魔化す。
    「当然じゃないですか。約束しましたもんね」
     その約束があなたを締め上げているのだろうか。
     あなたの、自由を奪っているのだろうか……
    「プレゼントは……あなたの時間が欲しいです」
     言ってしまってから、はっと口を抑えた。
     それに見合うだけの価値が、僕にあるとでもいうのか?
    「いいですよ」
     眼鏡がズレるくらい驚いて、うわずった声をあげてしまう。
     今、なんて?
    「実はもう元の世界に帰れないみたいなんです。あ、もちろんそれが理由ってわけではないいんですよ。えっと……」
     しどろもどろに言い淀んだ子供のままでいたがっていた大人擬きは、幼さの残る顔をくるくると変えて、ついにふっと破顔した。
    「どれくらい欲しいですか?」
     やっぱりこの人は僕よりもよっぽど大人びている。
    「僕が欲しいのは全てですよ」
     許可を得ずに細い手首を捕まえて、張り裂けそうな胸を反対の手で抑えながら、僕は子供のように欲張る。
    「全部、寄越してください……僕に」
     二人きりの渡り廊下。
     この世でもっとも価値ある時間を共有している。
     不確かな口約束に彼女は肯定の微笑みを浮かべた。
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    recommended works

    kazeaki_twst

    MAIKINGアズ監🌸「戻れない日々の続きを歩いて行く」
    前作の「星が降る夜に」の続き。
    その日は、本当にいつもと変わらなかった。
    四年生になり、いつもと同じように研修先からグリムと帰宅し
    「グリムーっ!ちゃんと外から帰ったんだから、手を洗いなよーっ!」
    なんて言いながら、自分の部屋で制服を脱いでいた。外は、すっかり暗くなり秋らしく鈴虫か何かの虫が鳴いている。
     そして、ふと鏡に目をやると首元のネックレスが光った。そこには、恋人が学生時代に使用していた魔法石───を再錬成して作った少し小ぶりの魔法石がついていた。監督生の頬が思わず緩む。
     これをプレゼントされたのは、ほんの数日前のことだ。

    「監督生さん、これをどうぞ」
    いきなり差し出された小さな箱を見て、監督生は首を傾げた。目の前は、明らかにプレゼントとわかるラッピングに、少し緊張した表情のアズールがいた。
     監督生は、何か記念日であっただろうかと記憶を辿り───思い当たる事もなく、思い出せない事に内心焦った。当然、自分は何も準備していない。
     しかし、このまま何も言わずプレゼントに手をつけなければ、きっとアズールは傷つく。いつも余裕綽々とした態度で、若年だと侮られながらも学生起業家として大人たちと渡り合う深海の商人── 2244

    kazeaki_twst

    MAIKINGアズ監🌸「戻れない日々の続きを歩いて行く」②その日、アズールは大学の講義を受けていた。そして、その後には、同じ大学だが他の学部に進学したジェイドとフロイドと合流し、モストロ・ラウンジに向かう予定にしていた。いつもと同じ大学の講義、教授の声。
     その中に、不意に
    ───『ア…ズール…せんぱ…』
    柔らかな、女性の声がアズールの脳裏に響いた。それはよく知った、大切な人の声。
     その瞬間、弾かれたようにアズールは立ち上がた。どくどくと変に心臓が高鳴り、オーバーブロットした時のように黒い墨がぽたぽたと胸の内に垂れ、酷く不安を煽る。
    (監督生…さん?)
     喉がカラカラに乾いて、息が上手く出来ない。初めて陸に上がった時とよく似た枯渇感が襲う。
    「アーシェングロット?何か質問か?」
    怪訝そうな教授の声が耳に届く。そこで、初めてアズールは自分が急に席を立ち、授業を中断してしまったことに気がついた。今まで何も聞こえなかった教室のざわめきが周りに戻ってくる。
    「あ、いえ…急に立ち上がってすみません。教授ここについて…」
    動揺を隠すように、アズールはにこりと笑い、予習していた内容を質問した。しかし、机の上に広げていたルーズリーフは強く握り込まれ、皺が寄 3041