あした世界が終わってもいいよ 9 無情にも、朝は来る。ベッドから起き上がってひとりでリビングに立つと、どうしようもなく寂しさが込み上げてくる。ここに、夏油はもういない。だからといって撮影が終わるわけもなく、五条はこのままアパートにいるわけにもいかないので、上機嫌なふりをして、ひとりで観光することにした。五条ひとりになったから撮れ高がなくなったと言われるなど、冗談じゃない。仕事はきっちりと完遂しなくてはいけない。でも、とても料理もする気になれないから、朝食は外食にした。こじんまりとしたカフェを見つけて、甘いパンとコーヒーを貰う。
「やっぱり、ひとりだとつまらないですね」
カメラにそんなことを話しながら、朝食を摂った。美味しいのは間違いないのだが、なんだか口の中がぼそぼそする。たぶん、ひとりで食べているからだ。こんなことを思うようになるなんて、不思議な話だった。
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