たまになら、「偶にはいいじゃないですか?」
そう言いながら、蔵馬が背中に寄りかかってくる。
「本当は、肩を枕にしたいんですが、飛影の肩だと高さが足りないんですよね」
ぐいぐいと体重をかけてきて、その強さに負けないように、背中に、首に力を入れた。
「……寝る気はあるのか?」
「ありますよ」
そう言うと、蔵馬は座りが良い場所を探すように、体をもぞもぞと動かしだす。
「じゃあ、少しだけ。貸してください」
ふっと身体の力をぬいたようで、背中全体に重みを感じる。しばらくすると、規則正しい息の音が微かに聞こえてきた。
身体を動かせば、起きてしまうだろう。だから、このまま。その背中の温もりだけを感じている。
久しぶりに、蔵馬の部屋の窓を開けた。
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