ゆりかごの夢「つーまーんーなーいー。さっきから同じのばっか。」
依頼人を見送って振り返ると、居候がソファーでくつろいでいた。
「仕方無いだろ。成熟しないままで自分が特別だと謳う物語なんて、どれも似たようなものになる。」
口コミでもあったのか、今日は珍しいことに同じ制服の生徒が何人も訪れていた。
「皆と同じ特別を他人に貰って何が嬉しいのかな。」
「少なくとも受け入れた自分自身には特別だと認めてもらえるんだ。充分満足だろ。」
「そういうもの?ま、いっか。同じことの繰り返しでお夕飯が豪華になるなら!」
ルビは積まれたチラシから器用にデリバリーのメニューだけを引き出していく。
「おい、勝手に。いつまでいる気なんだ、プー。」
呆れつつも、懐の厚みが心に余裕を与えてくるのか。そのままメニューを覗き込んでいた。