遠き日の夢物語『いつか、海から昇る太陽が見てみたいものだな』
そう言ったのは、もう数えることが出来ないほどの逢瀬を重ねた夜だった。
鬼殺隊隊士、それも柱である杏寿郎と上弦の参という鬼の中でも限りなく始祖無惨に近い存在の鬼である猗窩座。
あの無限列車での死闘の後、相容れない立場でありながら惹かれ合った二人は誰にも知られてはならない関係を築きあげていた。
恋仲、と言うと二人は否定するかもしれない。
そのような温かいだけの関係ではない。
相手を倒すのは己だけ。
執着、という言葉は近いかもしれない。
そんな二人は、闘い、そして……お互いの全てを相手に晒し、奪い合うように体を重ねた。
一つになりたい、離れたくない。
ドロドロに溶け合えれば、いつかその願いが叶う……わけもないのはわかっているのに止められない。
1690