🍰 王馬にとって食事とは、餓死しないための手段である。
この世には味覚を持たない人間がいて、王馬は生まれながらにそうだった。ただそれだけの話、だから特に悲観することなく生きている。
なにやらフォークと呼ばれるらしい体質を、名前がついたとて解決にもならないため気にかけたことはない。
味覚がないとはよく知られるが、その実嗅覚も申し訳程度にしか働かない。切っても切れない関係にあるそれら、どちらかが機能しないならばもう片方も機能しないのは当然だ。
ゆえに王馬の世界は、音と光、それから感触のみで構成されている。充分に豊かな感覚器官を憂いたことはないが、ゼリーとスライムを一目で見分けられるのはすごいと思う、そのくらいの認識。
1913