「蒼くて宝石のような飲物」 それは、蒼さんが15歳になったばかりの頃だった。僕は蒼さんの好きな物や事を少しずつ聞き出していたのだが――
「好物がない?」
「ええ、ないの」
この年頃の少女にしては珍しく、好きな食べ物がないという。というのも蒼さんは少食のため、あまり食べるのも好きじゃないと語っていた。
「……やっぱり食べるのが好きじゃないのかな?」
「いいえ、そういうわけじゃないの。……貴方が持ってきてくれる雑誌を見て、こんなに美味しそうなものがあるなんて、って思っているし……」
ただお店に出かけるということがあまりできないため、蒼さんもそれを見る度にため息をついている。
「それにね、家で食べても美味しいと感じなくて。それは小さい頃がずっとそうだったから……」
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