影→国 突然呼び出され、俺は今、体育館の裏に来ていた。いつもの仏頂面から、更にへの字に口が曲がって変な顔。何も言い出さない影山にイライラした。
「何の用? 何もないなら帰るけど」
「っ! その、好きだ」
「……は?」
「だから、お前が好きだ! ……それだけ、だから」
影山はそれだけ言うと、体育館の中へ逃げるように走り去って姿を消した。俺からすれば好きでもない、どころじゃない。質の悪い冗談でも酷すぎる。目の前で起きた事なのに、現実だとはとても信じられないし、受け入れられなかった。
その日は中学三年生、最後の大会まで一ヶ月を切っていた。アイツはいじめられるようなタイプではないが、友人もろくにいないし、奇跡的にいたとして罰ゲームなんかに従うタイプでもない。
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