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    虹亜科アユム

    @R6Cr9 成人済み。

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    虹亜科アユム

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    ゴリゴリ片想いしかありません。まったく甘い要素も無いです。エゴのぶつけ合い(友人曰く)が大丈夫な方は、是非読んでください。

    #影国
    shadowland
    #金国
    goldenState

    影→国 突然呼び出され、俺は今、体育館の裏に来ていた。いつもの仏頂面から、更にへの字に口が曲がって変な顔。何も言い出さない影山にイライラした。
    「何の用? 何もないなら帰るけど」
    「っ! その、好きだ」
    「……は?」
    「だから、お前が好きだ! ……それだけ、だから」
      影山はそれだけ言うと、体育館の中へ逃げるように走り去って姿を消した。俺からすれば好きでもない、どころじゃない。質の悪い冗談でも酷すぎる。目の前で起きた事なのに、現実だとはとても信じられないし、受け入れられなかった。

     その日は中学三年生、最後の大会まで一ヶ月を切っていた。アイツはいじめられるようなタイプではないが、友人もろくにいないし、奇跡的にいたとして罰ゲームなんかに従うタイプでもない。
     告白してきた(と思う)ときの少し頬を赤らめた様子とか、真っ直ぐ射貫くような熱を含む視線とか、言葉に詰まったりする様子とか……そういったものは普段の姿とはかけ離れており、告白という行為に真実味を持たせた。
    「無理すぎる……しかも、断る前に逃げやがったし……」
     部活の練習で疲れていた身体が、より重くなったような感覚に襲われる。引きずるようにして体育館に戻ると、こちらを伺う影山を無視して、普段通りの自分に戻った。

    ☆☆☆

     翌日の昼休み、金田一の前で独りごちる。
    「一方的に好かれて告白されるのが、こんなに面倒くさいなんて思わなかった……さいあく」
    「何があったのかは分からないけど、そんな言い方は無いんじゃ……相手がかわいそうだろ」
     部活の帰りに、いつも影山の愚痴を言うのと同じ口で、知らないとはいえ影山の肩を持つ。何だか無性に腹が立った。お前が言うなよ、なんて事情も知らない金田一を責め立てたくなった。
     俺が不機嫌そうに視線を逸らしたことに気付いて、何だかんだ宥める方に回ってしまう困り眉を見ていると、恨めしさも小さくなっていって許してしまう。油断ならない男だ。
    「じゃあさ、金田一は告白されたら無碍にしないの?」
    「そりゃあ俺、よくモテる国見とは違って、告白されただけでテンション上がると思うし……」
    「相手が知らない人だとか、苦手だと思ってた人でも?」
    「うーん、まあ断るかは別として、嬉しいかな!」
     頬を膨らませ、じっと正面から目を見つめる。実際に女子から告白されるシーンでも想像しているのか、少しばかり口角が上がってニヤけていた。

    (ああ、ああ――苦しめばいいのに、金田一だって)
     普段からよく世話をしてくれる友人に対して、自分勝手な黒い感情が湧き上がり、困らせたくなった。
    「よかった、安心したよ…………俺、さ……金田一のこと恋愛感情で好き、だから」
     緩みきっていた口元が大きく開かれ、目玉が飛び出しそうなほど丸くなる。そうだ、影山ほどじゃなくても、男の友人から告白されるなんて困るはずだ。
     恥ずかしくて直視できないような振りをして、チラリと金田一の様子を見る。いきなり腕で顔を覆って、身体ごと向きを逸らしたのは、今しがた無碍にしないと言ったばかりなのに嫌な態度を取りそうになっているからか。
    「お、俺、俺……! 俺も、国見のこと、ずっと好きって思ってた!!」
    「え……」
     告白に成功したことに驚いていると思ったのか、金田一は大きな音を立てて椅子から立ち上がり、視線が集まっていることにも気付かず俺を抱き締めた。
     何なら金田一の想いを知っていたのか、一部男子から拍手喝采すら起こる。女子の悲鳴とも歓声とも言えない声が響いて、教師がやってくるまで教室は賑やかになった。

    ☆☆☆

     金田一は恋愛経験に乏しい日本男児であるにも関わらず、意外にも性急さは無く、今までと変わらない過ごし方を好む。俺はと言えば、結局誰に告白されて悩んでいたとか、そういったことを相談出来ないまま、金田一と恋人ごっこをしていた。
     告白してきた後だって影山の王様っぷりに変化は無くて、こんな態度を取って好きな人に嫌われると考えないのかと、内心驚いた。アイツには感情を見せるのも勿体ない気がして、直接的には言わないけれど。

     告白の時にそれだけだ、と言った言葉に二言は無いのか、影山からもその後は特にアプローチがある訳でも無く。悩んだことすらアホらしくて、うっかり金田一と付き合うことになった責任だって、取って欲しくなる。
     幸いにも手を繋いだだけで喜ぶウブさに救われ、キスやセックスを求められることはなかった。

     来たる大会の決勝戦、我慢の限界だった俺たちは影山のトスを無視し、結果的に試合から下げさせた。俺たちの中学校生活は、変な気分のまま終わる。
     後から思えば、及川先輩に憧れていた俺たちは、セッターはスパイカーに打ちやすい球を上げるべきだと強く信じていた。間違ってはいないけど、盲目なまでに、そう思い込んでいた。

    ☆☆☆

     影山は烏野高校――落ちた古豪、飛べない烏で知られる――に進学したらしい。白鳥沢を目指すと思ったけど、そう言えば影山は頭が悪いんだった。
     及川先輩と岩泉先輩がいる青葉城西高校に、金田一と俺はともに進学し、相変わらず恋人ごっこを続けている。

     そんな烏野高校と、影山がセッターをやるなら練習試合を組んでも良い……と話が持ち上がった。烏野高校が条件を吞んだため、試合を行うことになる。金田一はやたらと影山の王様話を矢巾先輩に吹き込んでいて、どんな形であれ忘れられない存在なんだなと思わされた。

     だけど、影山は既に変わっていた。少しずつだけれど、何と言えばいいか……アイツの本気に応えてくれる良い仲間に囲まれて、良い顔でバレーしていて……別人のように感じた。
     じゃあ違う形で出会ったら俺らの関係は違ったのかと、柄にもなく考えたりもした。及川先輩が途中から参加して、空気が変わってからも、胸の内はモヤモヤした。

     練習試合に負けたと、分かっても分かりたくない自分がいた。
     頭を冷やしたくて廊下に出たら、偶然に影山と出会す。面食らって何も言えない俺に、アイツは一歩ずつ近寄って、真っ直ぐに立つ。
    (背が伸びた訳でも無いのに、すごい圧。何、言われるんだろう)
     身構える俺は、影山の顔が見れないで顎当たりを睨みつけていた。
    「……今も、変わんねえから」
     怒っているのだと思って、反射的に顔を上げる。影山は、耳まで真っ赤にしていた。突然中学校三年生の、体育裏に呼び出された記憶が、蘇る。まさか。
    「変わらず、お前のことが好きだ」
    「そ、う……」
     満足げにコクリと頷いた影山が、また、それだけだと言おうとしているのが分かった。それだけで、たまるか。
     胸倉を掴んで、引き寄せて乱暴なキスをする。目を丸くした影山に気分を良くして、驚いて開かれた口に舌を突っ込んだ。洋画でしか見たことがないようなキスをして、息が苦しくなって唇を離す。
    「次は、俺たちが勝つ」
     そう言って、いつかの影山みたいに走って逃げた。影山がどんな反応をしていたかは知らない。追い掛けてこないことを確認した上で、少しの間、階段でしゃがみ込んでいた。

     どこからか、アホみたいな歌が聞こえる。それから言い争うような声が聞こえて、様子を見に行ったら影山が立ち去る背中を見た。
     今日の状況で影山が言い争う相手なんか、限られている。角を曲がればやはりそこには金田一がいて、何を話したのか精神的に成長したような顔をしていたのが悔しくて、肩を叩いた。
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    「私たちだけで作ったケーキを夏油様に食べて貰いたいから準備ができるまで他所のお家で遊んできて」
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