けんかその日は、未曾有の猛暑であった。
エアコンをつけて、お気に入りの机でお気に入りの本を開く。最近手に入れた本は、至って平凡な男二人の恋模様を描いている。世間にある壁を越えてでも結ばれようと奮闘するその姿と、たどたどしいやりとり。なんて可愛らしくてハラハラする物語だ。
一章を読み終えてふぅ、と休憩を取ろうと本を閉じる。
「なに?昼間っからまたエロ本?」
「……その口を閉じてどっか行けよ、アルバニャン。」
「手厳しいな〜、お前の部屋の方が涼しいんだからいいだろって、なんか本ない?あ、ゲームでもいいよ。」
机に顎を置くようにしてこちらを見上げるアルバーン。確かにこれは「あざとい」。サニーが好きそうな顔をしてる、というと流石に怒られそうだな。
617