しみるから 敦の作った朝食を目の前にして、太宰は一口だけ食べたと思ったら、箸を持ったまま難しい顔をしている。
「どうしました? 食べないんですか?」
「いやほら……ちょっと口の中が痛くて」
左側の頬を手で押さえたまま、太宰は憂鬱そうな表情でいる。
卓袱台の向かいにいた敦が近づいてきて、「見せて下さい」と云うので太宰は素直に口を開ける。敦がよく見ると、左の頬、その内側にぽつんと白い点ができていた。
「あー……口内炎ですね」
「やっぱり?」
太宰は口を閉じると、箸を置いてため息をついた。
「敦君の作ってくれたご飯、無駄になっちゃうね」
寂しそうな顔で敦を見てくるものだから、敦は困ったように笑う。
「食べたければ何時でも幾らでも作りますから」
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