乗っ取り「大丈夫ですか、マトリフ!」
巻き上がる砂塵の向こうで蹲るマトリフに向かって叫んだ。アバンは剣を離さずにあたりを窺う。魔物の群れは不利を悟って引いていったが、まだ油断はできなかった。
やはりこの森はどこかおかしい。森に入って間も無くロカとレイラとも逸れてしまった。そしてそれを狙ったような魔物の群れの奇襲。魔王の影響を逃れて穏やかになったはずの魔物たちが、あれほど凶暴化するのは何か理由があるはずだ。アバンたちは森の瘴気のせいか身体が思うように動かず、なんとかマトリフの呪文で魔物を追い払った。
「マトリフ?」
立ち上がったマトリフは俯いたままだった。その横顔に違和感を覚える。どこか冷徹さを感じる表情のマトリフがこちらを見た。
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