もっと貴方を知りたくて 一日が終わった真夜中の天幕で、服を着直した男二人が並ぶには狭い寝台に、養父の隣へひっつき、指でつうと腕の古傷の一つを優しくなぞれば、驚いたように肩が跳ねた。
「……殿下?」
ジョセフが意図を理解できず、戸惑っているのが伝わってくる。普段は、解放軍の総督と参謀としている時にはまず見ることのない、素直な表情を見れたのが嬉しくて、アレインはにこりと笑みを浮かべ、もう一度傷をさすった。
「なあ、この傷はいつ付いたんだ?」
「傷…ですか?少なくとも十年以上前というのは確かですが……。いかんせん、付いた傷が多すぎて、一つ一つ覚えては…」
「もう少し考えてくれ、思い出せるかもしれないだろ?」
自分でもだいぶ無茶なことを言っていると思うが、養父は強引なアレインに戸惑いつつも手を口元に当て、律儀にも記憶を辿っていたが、やがて「ああ、そういえば」と手を離した。
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