甘ったれとある休日の朝、珍妙な毛布の塊を前に、カーヴェは仁王立ちをしていた。プカプカ水キノコンの頭をそのまま大きくしたような物体は、ベッドの上で動く気配がない。
「おはよう、アルハイゼン」
声をかけても、塊は反応しなかった。もう一度声をかけると、もそもそと蠢いた後、再び動きを停止する。
「……いい加減起きないか!」
布団の上で焦れている生き物は、賢者になりかけたスメールの英雄様、アルハイゼン書記官その人だった。
容姿端麗、聡明な頭脳と引き締まったうつくしい身体。良く回る頭でそつなく仕事をこなす彼の辞書に残業の文字はなし。さぞや私生活も隙が無く充実して……と思われているが現実はこの通り、寝台の上の芋虫であった。
「起きろって言ってるんだ!」
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