袋の中の飴 秋晴れの空に覆われた屋上で昼食を食べ終えると、手持無沙汰になってしまい、桜木は何も考えずに制服のズボンのポケットに手を入れれば指先に当たるものがある。ああ、と思い出した。桜木が自身のポケットから、個包装された飴の大袋を取り出す。昨日の部活の帰りに寄ったコンビニで買ったのだ。買うつもりはなく…コンビニに寄る予定もなかったのに。二つ折りにしていた袋をがさがさと伸ばして、一つ取り出して口に入れた。飴は全部で二十個入っている。昨日と合わせて二つ目の飴を舌で転がしつつ、空を見上げた。あー…まずい。昨日もそう思ったのに、また食べてしまった。桜木はぎゅっと顔を顰める。喉に優しい何たら成分が含まれていて…パッケージに印字されているとおり、確かに喉にはいいようで、今朝の朝練でも、声はよく出た。だが肝心なことは言えない。いやだってまだ早いし…口の中の苦味が、帰宅してからいじいじと袋の中の飴を数えた己と重なった。じわじわと顔や首が熱くなってきて、飴のまずさを忘れる。
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