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    hk_36_95

    しゅてるんです。創作のTLに流すには微妙な落書きや多すぎて困る動画に使った絵などを挙げてます。完成した漫画も見やすいのでこっち【@hk_36_95

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    hk_36_95

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    今から16.7年後くらいの優等生コンビの話
    日常の切り取りみたいな
    かる〜く今までの2人の話が会話の中でダイジェストしてるのでこれまでの2人に何があったかもなんとなくわかります。
    普段絵を書く人なのでアレな文章には目を瞑ってください

    「貴方って失くし物が多いわよね」

    僕には解らない魔法陣のようなものを杖で描きながら、
    ため息のように彼女が溢した。
    いつもは丁寧な喋りなのに珍しい。

    「眠り谷にいた時も、戻ってきたとはいえ色々な感覚が既になかったですし、髪も無くして、使い魔も亡くして…私が寝ている間に家族と腕も…」

    話しながら指を折っていく。
    魔法陣はその件の僕が失くした腕の残り端に施している。
    話してる内に書き終わった様だ。

    ー右腕は家族を失くした時に一緒に失った。
    正確には奪われただろうか?
    事情を彼女に話たら卒倒し、小一時間説教を受けた後、性能の良い義手を作ってもらえる事になった。
    これはその準備らしい。
    説明が少ないのは学生の頃からだ。

    「そうは言うが、君だってかなりのものを失くしているだろう」
    「…何ですって?」

    まるで自覚が無いように答える。
    本当にないのかも知れない。
    僕にはやっぱり解らない。

    「君だって、眠り谷に来る前にとある感情を失くしてたんだろう?卒業の前に眠って取り戻してはいたが。それにそのあとは仕事で事あるごとに髪を使っていただろう。度々伸ばした髪を切っては仕事に使ったと話していたし…今回だってそうだ。六年と一ヶ月、膨大な時間を眠りに費やして失っているんだぞ。
    人の事を言えるのか?」
    「少なくとも貴方よりは五体満足です。
    失くした腕を生やしてから言い返してもらえるかしら。」

    (確かに。いや、そう比べるものじゃないんじゃないか…?)
    葛藤のうちに言葉が詰まってしまった。
    フンッと鼻を鳴らして仁王立ちで僕を見下ろす。
    今回は彼女の勝ちだ。

    「大事な箇所さえ無くさなければそれでいいんですけれど。今回はそれで許してあげます。」
    「えぇと…今後参考にするので大事な箇所とは?」

    彼女の指が僕の額を指す。

    「ココと」

    ツンと額を弾いたあと、
    次に彼女が自分の胸に手を当てる。

    「ココです。」

    目を閉じてそう話す彼女の様子は宣誓の様だ。

    「心臓?」
    「…と心です。」
    「なるほど。」

    「急所だから当たり前なんですけど。
    心も失くしたら今よりもっと怒りますからね。」
    「君が寝ていたのはそれに当たらないんだろうか?」
    「私は良いんですよ」

    この答えだ。
    今日は僕の意見は通らない日らしい。
    が、彼女はそこに付け加える。

    「私はいいんです、エッグスがいますから。」

    横で卵達が誇らしげに胸を張っていた。
    どこが胸かは分からないが。
    今日来ているのは…番号が若い卵と目のついた二人一組のエッグスか。

    「私に何かあってもこの子達がいれば大抵の事は大丈夫。
    それに貴方もいますしね。」
    「そ、そうか!」
    「だから何かあったら困るんですよ。」
    「そ、そうか…」

    彼女の言葉に一喜一憂してしまった。
    このままでは話題が元に戻り、また小言を言われる。
    ふと、純粋な疑問を投げかける。

    「でも僕が居なくなったらどうするんだ…?」
    「そう…ですね…」

    彼女は少し思案する。
    「そんな質問!」と言われる事も覚悟したが
    どうやらその心配はないようだ、

    「貴方も…エッグスにしちゃいましょうか?」
    「で…きるのか…?」

    代わりに別の心配はしなくちゃいけないようだが。
    嫌な汗が背中を伝う。

    「エッグスは私の血と農場で買った有精卵が素ですから。貴方の血と有精卵が揃えば可能です。ま、貴方をエッグスにすると言うと語弊がありますけど。」

    とんでもないことを話している割に存外楽しそうだ。ロードリックに「赤い雨の魔女」と呼ばれていた側面が出ている。
    自分がエッグスになるというより自分の分身がエッグスに加わるんだろうか?

    「貴方と私では歳の取り方が違いますからね。
    いつかそんな日が来たら、
    作ってしまうかも知れませんね。」
    「それは僕になるんだろうか?」
    「さぁ?育てるのは私ですから。
    同一人物にはならないでしょうけど、
    貴方の能力は一部引き継がれるでしょうね。」


    「もしそんな日が来たらの話ですよ。
    今はとにかくこれ以上何も失わない様に、
    自分を大事に生きて下さいね。」


    そう締めくくった後、
    「魔法陣が定着するまで安静」
    と一言放ち、呼び出したNo.10の転移魔法で戻って行った。

    改めて施してもらった魔法陣を見る。
    これを義手と合わせるとより元の腕の動きに近づくらしい。
    運動記憶を…なんと言ったか?

    「君には貰ってばっかりだ」

    失った物も多いかもしれない、
    でも貰った物も沢山ある。
    言葉については良くも悪くも貰い過ぎている。

    「エッグスになれば、恩を返せるんだろうか?」

    自分が死んだ後、
    本当に彼女はやるだろうか?
    しかし、エッグスになった自分は
    果たして僕と言えるだろうか?
    そこで恩を返してもそれは…

    そう思った時、
    「死んだ後に返す気なの?遅過ぎです。」
    と頭の中の彼女が言った。
    現実の彼女が言ったわけではない、けれど。

    「…やっぱり生きているうちに返そう。
    まず新しい腕に慣れてからだ。」

    今はとにかく、今の自分で役に立とう。
    腕は無くしたが、まだ片手と両足が残っている。
    彼女の言う大事な箇所も。心も。
    短気な彼女だ、今すぐ役に立つ方がきっと喜ぶ。

    『ーNo.13』

    そう呼ばれる日はきっとまだまだ先だから。
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