遊びに来たよ。それじゃまたね~「千佳良くーん、元気にしてた〜?」
バン、と力任せに内扉が開き、畳の上に寝転んでスマホを眺めていた千佳良は猫のように飛び上がり、反射的に壁へと引っ付いた。
「な、なん、何だよ」
バクバクと鳴る心臓のあたりを押さえて、千佳良は突然入ってきた叔父——厳密にいえば養子になった家庭の父の弟であり、千佳良のじつの叔父ではないが——を見上げた。
さすがに普段は、ノックなり何なり訪問の合図をしてから部屋に入ってくるが、彼の浮かべる満面の笑みから察するに、今の彼はすこぶる機嫌が良く、その勢いでドアを開けたらしかった。叔父の体越しに玄関側を覗いてみれば、そちらのドアも開けっぱなしになっていた。築年数が40年を越えるこの古アパートは、ドアを開けたら開けっぱなしになってしまうのだ。千佳良は眉をひそめて立ち上がると、上機嫌な叔父のかわりに玄関のドアを閉めた。先ほどはすごい音がしたから、下の階に住む大家に明日あたり文句を言われるかもしれない。
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