兄者の手紙「
これはな、俺の兄者が俺にくださった手紙なのだ。
収蔵品として兄者と居所を分けられて長い日々を過ごしたが、その間に思われていたこと、先に顕現なさった兄者が、俺の顕現の儀式を待つ間に思われていたことをしたためて、贈ってくださったのだ。
嬉しいことしか書かれておらぬ。
俺を喜ばせてくださることしか書かれておらぬのだ。
俺と再び逢うことが叶って、天にも昇る心地だと。
このような手紙、これこそが重宝だろう?
俺は、数多の俺の中で一番幸せな膝丸だと、数多の俺に向かって叫びたい気持ちになった。
…それなのに。
今、兄者はここにはおられぬ。
少し旅に出るからと。
また、俺は兄者と分かたれてしまった。
まさか、今度は兄者自身の手で。
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