新設本丸のバグ話(神無月の兄者)立ち上げたての機関というものは、往々にして不具合が多発するものである。
本丸の庭木も色づいてきた十月。
神無月だか神在月だか、高尚な神様達は忙しい時期なのだろうが、刀だろうと鍋釜だろうと数多の付喪神には何も変わらない毎日だ。
非番で万屋街に来ていた髭切は、表通りでふと、あちこちから上がる悲鳴を聞いた。
何だろうと周りを見回してみれば、何振りかの男士達が光っている。転送装置を使ったときのものだ。
もちろん万屋街の往来を歩いているときに突如発生するような現象ではなく、飛ばされそうになっている物達は一様に慌てた様子で、聞いた悲鳴は彼らから発せられたものだと分かった。
「ありゃあ?何だろう、あれ」
何だか分からないけど大変そうだなぁ、でも僕は早く帰らないと。朝から遠征に出ている弟がそろそろ帰って来るから、出迎えてあげなきゃね。と、のんびり踏み出した足元には、地面の感触がない。
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