my heartbeat,your heartbeat「悠仁。お前の心臓を貸してほしい。」
「え?」
「あ。違う。胸を貸す?」
「それだと訓練場に行くか・・・空いてっかな。」
「それも違う。傷を治したい。」
「どゆこと??」
それから少したって、悠仁の部屋。
「すまないな。助かる。」
「いや、最初びっくりしたけど…わかったら、平気。反転術式とかそんなんだったんか。」
「どちらかというと、赤血操術、だな。腕の血管に違和感があったから、治す。心拍の具合も見たいから、お前の心臓の音を頼りにしたいと思った。火傷を負う前と呪力や血液の感覚が変わってしまっているから、別のものが必要になって、な。」
「…いきなり、心臓貸せ言われたら、とうとう敵討ちスイッチはいったかとおもった」
「すまない、 胸を貸す、というのも稽古相手になれ、という意味になるのだな…。覚えておく。」
「んじゃ、どうぞ。横になったほうがいい?」
「そうだな。床で寝るから…」
大きな頭が、胸の上にある。重いだろうから、とちょっと斜めになってのっかって来てる。
なんか、ちょっとだけ懐かしい、というか、重たいの半分、あったかいの半分。東京で呪霊狩りをしていたときも、寒そうにしているのがわかったらしく、何も言わずにそばに寄ってきたっけ。おかげで、ぼちぼち、眠れた夜が増えていった。
「重たくないか?緊張しているか…何もしないから、そのまま深呼吸してくれ、落ち着いて・・・」
「ん。重いのはへーきへーき・・」
とくん。とくん。目を閉じて、悠仁の心臓の音を足掛かりにして、自分の心臓に意識を向ける。
心拍は、大体今感じている悠仁のものと同じ。
意識を血液に切り替える。
心臓。肺。心臓。ふくらはぎ。足の先。両足は異常なし。
心臓。肺。二の腕・・・見つけた。腕のつなぎ目。切り離して、伸ばした後にくっつけたあの時は急いでくっつけたから、後になって流れが弱くなっている部分が出てきていたのか。
血管をつなぎなおして、手を血管で作っていくイメージ。再構築。再起動。血液を止めて、流していく。
つながった。
ふぅ、と一息ついて、無事につなぎ直せたことを感じ取る。
少しだけ頭を持ちあげると。
すっかり眠ってしまった悠仁の顔がそこにあった。
「動くと、起こしてしまうか…。」
すっかり安心しきって瞼を閉じたその顔がどうしようもなく、いとおしく思える。
もうすこし、寝たふりをして眺めてやろう。日が沈むまではまだまだ時間がある。
「ありがとう。悠仁。それと、おやすみ。」