流砂の中で「俺が生まれた時、どうだったか、だって?」
「うん、瑠璃にーちゃんなら、覚えてるかな、と思って。」
「あんまりおもしろいものでもないぞ。 あ、そうだ。アイツと真珠には言うなよ。」
生まれた時…生まれた時…ぼんやりとした記憶を手繰り寄せて、言葉にすることは難しい。
気がつくと、砂だらけの場所にいた。
頭や顔に砂がかかる感触がして、目を開けた。
それから、自分に手と足があって、頭があることに気がついた。胸に宝石がくっついてることにも。
上を見上げたら、真っ暗だった場所が一カ所だけ明るかった。
気になって、体を起こして、歩いていた。そこまで何度も砂に足を取られて何度も転んでた。転んでいるうちに歩き方はなんとなくわかってきた。
10回近く転んだ時には、起き上がり方がわかってきた。
20回近く転んだ時には、顔から砂に突っ込むことはなくなった。
そこからはもう数えていない。とにかく、あの明るいところに行ってみたい。それだけしか頭になかったから。
そうしてやっと、さっき見た明るいところにたどり着いた。
明るい所に立って、上を見上げたら、胸の核と同じ色をした星空と輝く月が見えていた。
核が光って、なんとなくだけど自分が珠魅であることと、核が砕けると死ぬことはわかった。
上を見てぼんやりしていると、いつの間にか自分が頭から布をかぶっていることに気が付いた。さっき転んでいたときにはなかったものだ。
でも、これなら、月の光も眩しくない。
明るいところはほかにないかと思って、洞窟の中を歩き回って、出口を見つけた。
そこから出たら、先ほど見たものとは比べ物にならないくらいの広くてきれいな星空に月が浮かんでいた。
「そこからは、俺と同じようなやつはいないのかな、と思って、探し回ってた。」
「まじかよ!瑠璃兄ちゃん転びすぎ…いや、そうか。生まれたばっかりだもんな。俺だって赤ん坊のころがあったし。」
「面白くもない話だったろう?」
「「いいや!全然。」」
・・・一番この話を聞かれたくないやつがそこにいた。
「おい。いつからそこにいた?」
「瑠璃が何回も転んでた、って話あたりから。」
サイアク。どうやって口止めしたものか。
「真珠には言うなよ。言ったらコロス!」
「わかったわかった。でもさ、なんか納得がいった。瑠璃の核って、星空の色なんだな。だからすっげぇきれいなんだな。瑠璃みたいに。」
「・・・キレイって何度も何度も言うな!やっぱりコロス!」
「とか言いながら、瑠璃兄ちゃん顔真っ赤だぜ。」
いたたまれなくなって、頭から毛布をかぶった「友人」と、それをなだめる「師匠」をしり目に、小さな魔法使いはみんなの分の飲み物を取りに行くのでした。