勧誘 マトリフは城内の廊下で声をかけられた。パプニカで開かれた祝賀会は盛大で、その会場からマトリフはこっそりと抜け出していた。
「あんたか」
マトリフを呼び止めたのはパプニカ国王だった。周りに付き人もいない。日が落ちて蝋燭の灯りだけの薄暗い廊下にいるのはマトリフとパプニカ国王だけだった。
「少し話がしたいのだけれど、良いかな?」
遠くに聞こえる喧騒をさらに遠ざけるように、パプニカ国王は廊下の先を手で示した。
「聞かれたくないような話なのかよ」
もし付き人や取り巻きの大臣が聞いたら眉を顰めるようなマトリフの敬意のない言葉使いも、国王は気に留めている様子はなかった。
「まさか。改めてお礼が言いたかっただけだよ。大魔道士マトリフ」
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