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    ジャンルもカプもごちゃごちゃ
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    hnkisy+lt ltが紅茶が好き?なのが好きなのとhnkisyがltのオフィスによく来てるっぽいのが好きなので 作者は紅茶についてそんな詳しくないです!

    レトのオフィスには、一区画だけ仕事から切り離された空間がある。
    そこには一つの棚があり、そこには何十という紅茶缶と、いくつかのティーポットとティーカップがしまわれている。
    レトは仕事に区切りがついた時、あるいは逆に仕事が煮詰まった時は、そこから自分の体調や気分に合わせて茶葉を選び、紅茶を淹れるのだ。
    その時、部下がいれば一緒に彼あるいは彼女の分も淹れてやるし、レトのオフィスに来客があった時にもそれらの茶葉はふるまわれる。
    レトの部下にも紅茶を淹れられる人間はいるし、ある程度の、最低限のものでいいのであればその人数はもっと増えるだろう。
    しかし、レトは茶葉を選び、ティーポットにそれを入れ、お湯を注ぎ、蒸らし、出来上がったものをカップに注ぐという一連の動作を、自ら行うのが好きだった。
    その間は、レトの頭からは目の前の紅茶の色、香り、それらとティーカップの形状や模様との調和―それ以外のものは出ていってしまう。
    そんなレトに最近、紅茶をふるまう相手が1人増えた。

    「あれ、これはこの前と同じものだね。僕が気に入ったって言ったのを覚えててくれたんだ?」
    「ええ、もちろんです」
    ティーポットを持ち、立っているレトが微笑む。
    そのそばにあるソファに変形者が座り、ティーカップを持ち、たった今そこへ注がれたものから湯気と共に立ち昇る香りを味わっている。
    「閣下がまさか紅茶に造詣が深いとは思いませんでした。そういう方がお相手だと、私もつい張り切ってしまうのですよ」
    「君よりずっと長く生きているんだから、このくらいのことは覚えるし、分かるようになるさ」
    そう言って変形者は、カップの中の琥珀色を口へ含む。
    「うん、美味しい。あの赤目の老いぼれもワインばっかり飲んでないで、たまにはお茶も飲めばいいのにね。あいつはよく人を見ては血の匂いがどうのこうのって言うけど、あいつの血はワインの匂いがするんじゃない?いや、あいつの体には血と一緒にワインも流れてたりしてね」
    「ははは……」
    無論、本人がいないからこそ言うのだろうが、本人がいれば間違いなく何事もなくはすまないだろうことを平然と言う変形者に、レトが眉を下げて笑う。
    「ですが、言われてみれば……たしかに、最近こうしてお茶をふるまう相手といったら閣下しかいらっしゃらないかもしれませんね」
    変形者の奥にある壁を―その先の、もっと遠くのものを見ながら、レトは言う。
    それは目の前の相手に、変形者に届けるつもりのない独り言のようでもあり、その声には悲しみ、諦め、懐かしみ……様々な感情がこもっていた。
    「……」
    変形者がまた一口、紅茶を飲む。
    「……殿下なら、お茶も飲むかもね」
    「殿下?摂政王殿下のことですか?」
    「うん。あとは、聴罪師も飲むかもね。あいつの好みなんか、僕は知らないし興味もないけど。あっちだって僕のことは良く思ってないらしいしね。ま、どうでもいいけどね~」
    「そうですか……」
    テレシスも聴罪師も、どちらもレトが親しく話すとは言いがたい相手である。
    聴罪師にいたっては、そもそもほとんど話したことがない。
    変形者とレトも親しいとは言いづらいが、それでも彼、あるいは彼女は他のサルカズに比べれば話しやすい方だ。
    「僕たちの計画もだいぶ進んできたからね。殿下はかなり疲れてるみたいだし、案外お茶でも飲んでリラックスしたいと思ってるかもよ」
    「……」
    レトは自分が渡した紅茶缶を受け取り、それで淹れられたお茶を飲むテレシスを想像しようとしたが―なかなか上手くいかなかった。
    大体、テレシスがレトの前で何かを飲んだり食べたりしているところを見たことがない。
    レトがテレシスに会うときは専ら仕事に関することなので当たり前と言えば当たり前なのだが。
    また、さきほど名前が出た大君がまさにそうだが、サルカズにはレトとは体の仕組みというか、食生活が違う者もいる。
    ナハツェーラーの王もレトがほとんど関わったことのない軍事委員会のメンバーの一人だが、彼も外見からすると、通常の食事をする姿はイメージできない。
    というより、一体どう食事をしているのか分からない。
    しかし、変形者がテレシスにもお茶を飲ませてみろというのだから、少なくともお茶は飲むのだろう。
    「……考えてみます」
    「うん、そうしてみなよ」
    そう言うと、変形者はもうこの話題への関心は失せたようだった。
    「そういえば、レト、また本を貸してくれる?前も言ったけど、ロンディニウムの人たちが、この時代を……この時代のこの国を、都市を……そこに住む人々を、あるいは自分を、どう描くのか興味があるんだ。本じゃなくても、音楽でも、劇でもいいんだけど、そういうのが分かるものを見せて欲しいな。自分でも探してるんだけどさ、ひょっとすると君は元々ここに住んでるし、僕たちのまだ知らないものを知ってるかもしれないからね」
    「……分かりました、探してみます。また、近いうちにここへいらっしゃいますか?」
    「どうかな。次の仕事がいつあるのか、どういうものか次第だからね。とりあえず用意しといてもらえるかな」
    「承知しました」
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