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    ある程度まとまったら支部に引っ越してます

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    お風呂でまったりちるらん暖かくて眠たくて気を抜けば眠ってしまいそうになる。ほんのりと良い匂いがして乳白色のお湯が見た目も綺麗で。うとうととしてしまうけれどもこっくりと首がうなだれそうになるたびにチルカが首にお湯をかけてきたり腰を指でつっついてくるので目が覚める。

    「~~♪」

    耳の後ろからチルカの歌声が聞こえる。随分と上機嫌なようだった。そのメロディーは、うすぼんやりとした記憶の片隅とマッチングした。覚えている気がするし知っている気がするし、なんなら僕も歌ったことがある気がする。

    「その歌…」
    チルカの鼻歌がサビと思われるあたりのメロディーを刻んだところで記憶の片隅がぴかりと光った気がした。思い出した曲名を告げるとチルカがそうだ、と肯定の返事を返してきた。ウィンタートライアングルの歌。そうだ。だいたいいつもコンサートの中盤、いい感じに盛り上がっていたところで歌っていた歌。

    「俺の気に入っている歌の一つだな」
    「ふーん」
    「ベテルギウスは、こっちの方が好きだと言っていたな」

    チルカはそう言って、今度は静かなバラードソングを歌い出した。聞こえてくる歌詞は片思いの切なさを歌ったものだった。そうか。昔の僕はこの歌詞に共感を覚えていたのか。今となっては他人事のように感じるけれども。

    少なくとも今、こうやって、湯船に浸かって二人でまどろんでいる僕には―――お湯が暖かくて、体も満足感で満ちているから思考が停止している僕には。暖かくて幸せだから、切なさとは程遠い。
    チルカの腕が背中から回されて、僕の腕ごとくるんで交差していて僕は自由に動けない。足の間にすっぽりと体がおさまっていて少し窮屈に感じる。湯船もそれほど大きくないからなおさらだ。

    チルカの歌はまだ続いている。良い声だな、と素直に思う。そしてやっぱり暖かくて眠くなってくる。昔の僕は歌詞に自分を重ねて胸を痛めていたかもしれないけど今の僕には歌詞は思考に入ってこないしただの子守唄のようだ。このままだとここで寝落ちてしまう。あたたかいから。気持ち良いから。眠ってしまったらチルカはちゃんとベッドまで運んでいってくれるだろうか。

    こらベテルギウス、風呂で寝るな。風邪をひく。落ちていく意識の中でそんな声が聞こえたきがするけどもうこの眠気には抗えない。閉じた瞼が重いし、こくんと首が沈んで顔がお湯に濡れる。かろうじてチルカが手で抑えてくれたから唇までは至らなくてお湯は飲まずにすんだ。覚えているのはそこまでで、目が覚めたら変わらずチルカが背後から抱きしめてくれていたけどちゃんとお湯の中ではなくベッドの中に場所は変わっていた。
    運んでやったが重かったぞ、と苦言を呈されるのはその少しあと。
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