2人のイレギュラー 私は陛下の為の魔剣です。
その為に……この剣を振るう。
「隊長!
レオン=ブルク聖王国が攻めてきました!」
……やはりか。
出来れば避けたい戦いではあったが仕方がない。
「兵を集めろ!
陛下の御為に、氷の刃を振るえるものは【俺】についてこい。
出撃だ。」
陛下の近衛騎士であり、セントグラード騎士団長である以上はこの戦では負ける訳には行かない。
「今日こそあの野蛮な女団長に一泡吹かせてやりましょう。」
温室に居るソーンに声をかけて行こうかと思ったが、民を巻き込む訳には行かない為そのまま出撃した。
人数はこちらが有利……ならば勝てる……
「失せろ」
敵国は女性兵だから抵抗があるのかと言われたら……無いな。
戦場に来ている以上、女だろうが関係無い。
生きるか死ぬかだ。
「獲物はだぁれ……」
この声は……
「!避けろ」
あの女団長の獲物が近くに居た兵士の腰を取り、引っ張って切り刻んだ。
「あっはっはっ
うちの団員のが強いわよぉ、ぼ・う・や♡」
いつにも増して癇に障る女だ。
「ちぃっ!
回復魔法がある者は後ろに下がれ!」
支援魔法が無ければコチラの勝利は難しい。
ましてやあのセルピエンテに捕まればもう逃げ場は無い。
こうなれば相打ちも視野に入れるしかないか……。
氷点術式は……まだオドが満ちていないから、打てないしな。
「凍てつけ!」
氷柱で部下を護りながら前線を張るのは難しいし……今日は日差しが強いから氷が解けるのが早い。
くそ……どうする……。
「アダム、らしくないぞ。」
後ろから頭をポンポンとされ、こんな状況でコレをするのは……ジェニトか。
「俺達には王宮剣術があるだろう?」
「……あぁ、そう……だな。」
一応上司ではあるから同意は出来るが、力ではジェニトに勝てた事は無い。
「勝ったらあっこのサボりの奢りで一杯やりましょー」
リョーフキーを指差しながら部下達が士気を上げてくれて、安心しているのも束の間……
「避けてみなさい!
死を刻む暴風、セルピエンテ・バイレ!」
引き寄せられる暴風が何人もの部下達を絡めて行き、俺は地に剣を突き刺したジェニトが盾になってくれたので数人は巻き込まれない様に腕を掴むので手一杯だった。
だが、この一瞬しか……勝機はない。
「……ジェニト、肩を借りるぞ。」
「あぁ、介錯は任せな!」
ジェニトの肩を踏み、野蛮な女団長が居る場に飛び込んだ。
「氷点術式の準備完了。」
よし、もっとだ……もっと近くまで……
「あらぁ、自らセルピエンテに飛び込むなんて愚策じゃなァい」
「……あぁ、愚策だ。
だがな……俺にも考えがある!」
この1発しか……無い。
「アルマ一刀流秘奥義・アイシクルコフィン」
野蛮な女団長のセルピエンテが俺の身体を刻み尽くすギリギリの所で、自分を囮に野蛮な女団長ごとジェニトに「万が一に備えて俺を斬れ」と命令をしていた。
「厄介な術ね……」
女団長が凍った今しか無い……
「ジェニト!今だ」
自分には……もう魔剣を呼び出す魔力も残っていないから……ジェニトに全て託します。
ジェニトの大きな手が俺の頭を撫でると、ジェニトの力強い一撃で目の前の氷漬けの女団長ごと【俺】を斬り捨てた。
「ゴホッ……申し訳……ござ……いませ……っ……陛……か……」
──アダム・ユーリエフ、
マリア=S=レオンブルク 共に戦死
───ガガガ……ガピッ……
生命活動ノ停止ヲ確認、ゴ臨終デス。
侵食シテ、ボクノ#コンパス二加エヨウ。
コノ二人ナラコア解析プログラムへノ攻撃二十分利用出来ソウダ。
ヒーローツイカ………セイコウ
システムエラー…………イジョウナシ
#イレギュラー --弑逆の蒼騎士--
#イレギュラー --隷属の赤薔薇--
ヒーロートシテショウニンシマシタ。