オリジナル創作漫画「スローバック」の制作秘話〰〰〰脚本の制作秘話〰〰〰
【舞台】
1970年代、5年間傭兵として姉弟を雇っていたマフィアが内陸部まで撤退することになった。
原因は、アメリカに宣戦布告した旧メキシコ現新南米国との戦火が、マフィアの本拠点ルイジアナまで迫ったから。
内陸部はアメリカ政府の目が光っているため、感染者の姉は連れていけず、元々姉がゆっくり暮らせる場所を見つけるために旅をしていた景四郎は、マフィアのボスからの正式採用を断る。
亡くなった息子と重ねていたボスは愛銃を譲り、景四郎は寂しく思いながら、難民専用の改造脱出船に乗るのであった。
【拳銃】
景四郎は今まで素手で戦ってきた美里のために、ボスから譲り受けた愛銃を美里に渡してしまう。
なので景四郎の戦闘スタイルは、ライフル(モーゼルGew98)は持っているが、拳銃時代が染み付いているため、近距離戦闘が多い。
【パエリア】
パエリアはポルトガルの料理ではなく、スペインの料理。
景四郎は学がないため、間違えてパエリ"ヤ"と覚えている。
【景四郎】
髪はいざという時にお金に還元するため伸ばしている。切ると坊主になって、キャップを被る。母親も父親も興味がなく、育ててくれたのは姉。その姉が感染者になったのなら、感染者と暮らせる安寧の地に行けば良い、殺させるものか、と思っている。
カナヅチ。嫌いな食べ物はブロッコリー。現在16歳。身長168cm。
【フラウダートル感染症】
フラウダートルはラテン語で「詐欺師」
感染源は南アフリカ付近。
脳のニューロンに影響して、様々な生き物に「元祖返り」する病。(感染者はハイライトが消える)
秀太郎は「サメ」、後半に美里が戦った感染者は「狼」、美里は「ホッキョクグマ」の本能をそれぞれ植えつけられている。感染すると人間の記憶をほとんど失う。
【美里】
髪は2人を拾ったマフィアの幹部がウルフに切った。14歳で感染者となる。現在19歳。
景四郎のことは、母性を感じて護っている。なんでも喰う。猫アレルギー。
【秀太郎の母】
キリスト教信者。
聖地エルサレムを求め、大西洋横断の船に乗っていた。
【その後の結末】
ポルトガルに着いた姉弟は、パエリアがスペインの料理だと知り、スペインを目指すようになる。
その後、景四郎はフラウダートルウイルスの抗体を持っていることが判明し、世界中から狙われるように。
終焉では、人ではなくなった姉が、最大で最後の複雑な思考をし、景四郎から離れる決断をする。
その頃世界では景四郎の争奪戦(第四次世界大戦)(抗体が見つかると感染が治るが、軍事利用として扱っていた感染者を手放すことになる)が動き出す。
姉から突き放されて放心した景四郎は半廃人になり、のちに姉に救われるが、数時間もしないうちに政府により景四郎は焼死される。同時刻、姉もその危機に勝てず、弟が死んで後を追うように死んでしまう。
これは姉弟の終焉の物語である。
〰〰〰ネームの制作秘話〰〰〰
🔸1p「ごめん ねーちゃん 約束したのに」
漫画の最初の1ページ目は【読者を引き込む導入→台詞は少ない方がいい】【これはこういう漫画ですよという紹介】というのが大事だと思っています。
今回は
・最初から命の危険
・ライフルを持つ主人公と襲い掛かる姉→少なくともバトル漫画であるという理解
・『ごめん』どうして謝っているのか?
・『ねーちゃん』の文字の横に変わり果てた姉の姿→これが姉?どうして?
・『約束』とは何か?
・ライフルを撃った→どうなる?次のページをめくりたくなる
と、様々な工夫を取り入れました。
🔸2p「最後にまた一緒に〜」
先述した通り、結末は2人が死ぬので、結果としては2人とも死ぬけど、この時点ではどちらが死ぬとかは断定できないようにして、読者に含みを与えました。
舞台を分かりやすくするために、題名の次に景色・場所を表すコマを作り、海の音から本編を始めました。
🔸3p「ねーちゃん これ、ねーちゃんに渡しておくね〜」
景四郎は前2ページである程度登場していたので、今度はヒロインの(獣じゃない)美里を全面に出しています。顔漫画にならないように、適度に背景や全身のコマを忘れずに描いていきます。また、ここは左ページなので、ページをめくりたくなるように疑問文で終わらせています。
🔸4p「僕、パエリア食いたい」
先述した通り、景四郎はパエリヤを間違えてパエリ"ア"と覚えています。ですが2ページ目では正しくなっているので、ポルトガルに着いた時に姉と初めてパエリヤを食べ、名前が違ったことに気付きます。そんな何気ない光景が最期に浮かぶ、ちょっとだけ残酷な描写にしました。
🔸5p「へへ 何年ぶりだろうね」
『何年ぶりだろうね』と希望に満ち溢れた場面なので、空を見上げてかもめをいれました。ここも同じく左ページなので、次のページをめくりたくなるような工夫をしています。
一番最後のページではこの『これは堤景四郎と堤美里の姉弟の物語である』という文字が『これは堤景四郎と堤美里の終焉の物語である』と、伏線?回収したのもお気に入りです。
🔸6p「ねーちゃん起きて 朝だよ」
朝起きたら景四郎に抱きつくように美里が寝ています。美里は母性で景四郎のことを護りたいと思っている部分がここに現れています。
舞台が食堂に代わり、最後に景四郎が『わかった?』と問いかけるようにし、次のページで美里が何と答えるのか、次のページを(略)
🔸7p 「うん 多少うさんくさいけど」
外国人の従業員が出てきます。外国語と分かるように、吹き出しを横にし、文字列も横にしました。また、最後の素敵な笑みを浮かべる美里で、次のページ(略)
🔸8p ニコッ
ヒロインの最大の笑顔なので、より素敵な笑顔を演出しました。
『すみません隣を失礼しても?』という縦の通常セリフで、日本語だと分かるようにし、かつ黒シルエットで読者に誰だろうと疑問を持たせ、次のページ(略)
🔸9p 「ふふっ 良かった」
新キャラ2人の登場なので、全身を分かりやすく入れようとしています。この後、2人が栄養失調で感染者への伏線として、2人の細い腕を見つめる景四郎のワンカットを挟んでいます。美里は話せないし、人間としての空気を読む才能などは忘れているため、話しかけられても自分のことだと気付いていません。そのため景四郎が『あー』と誤魔化し、なんと返すのか読者に含みを与え(略)
🔸10p「姉は寝起きが悪いんです」
会話シーンなので、ページが単調にならないように、顔漫画にならないように、カメラワークを工夫しています。最後は疑問のセリフにし、次のページ(略)
🔸11p「…そんなところです」
景四郎はニコッっと笑い返し、誤魔化しています。
朝起きるのが遅い景四郎たちと秀太郎たち、もう無くなりかけているスープのことから、背景に書いてある団体客が、食堂に入ってきたのが最後だと推測できます。そして、じゃんけんをしていることから、何かを決めていることも推測できます。
母から缶詰を譲り受ける秀太郎ですが、同い年に見える景四郎を意識して、一度遠慮します。この際、親子のやたらと細い手指に景四郎は注目しています。
🔸12p「……じゃあもらう」
缶詰に含みをもたせて、一度場面転換の意味も込めて背景カットをいれます。最後のコマは敢えて口だけを写し、これから言うセリフの重要度を上げ、次のページ(略)
🔸13p「母さんのこと覚えてる?」
ページをめくり縦のコマが入ることで、読者に衝撃を与えています。親子を眺める美里は、人だった頃の本能から、はたまた感染者の潜伏期間の察知なのか…かもめが飛んでいることから、時間軸も夕方にし、よりエモくなるようにしています。最後のコマはバンッという擬音で締め、次のページ(略)
🔸14p「流石に見すぎじゃない!?」
唯一のギャグシーンなので、徹底的にギャグにします。平和なシーンから衝撃を与えるように、トレイを落とした衝撃音で次のページ(略)
……飽きたのでこのあたりで解説終わります(唐突)