西武門 永利の後日談◇
0とは、物事に終わりを告げるカウントダウンである。
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精神科の開放病棟での生活が始まってから、1〜2週間が経った。それ以前の閉鎖病棟での記憶が曖昧だけれど、担当医師である彼が言うには、今の自分の精神状態は比較的安定しているらしい。玲子も、それを聞いて安心してくれた。
…でも、あのせんせい、きょうも喋ってくれなかったなぁ
「……相変わらず彼は君の話を聞かない。けれど、悪い人では無い…対応は丁寧な人だから」
もう、お兄ちゃんまたおとなぶってる
「…そういう玲子は、相変わらずだね」
おとうさんとおかあさんにも会いたいのに、まだ退院できないなんて。ふしあなだよ、あの先生
「……あぁ、そうだな」
玲子の言葉の端々に感じられる苛立ちも、僕にとって理解できないものでは無い。
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