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    ヴァレンティオンデーの記録

    食べ物を贈る話2ヴァレンティオンデー。それは愛を伝える日。
    そう教えてくれたミィケット野外音楽堂で布教活動をしていたリゼットとその仲間達に、愛とは何かを尋ねたのはつい先日のこと。
    愛とは誰かに特別な想いを抱くことであり、この日はその人物に改めて日頃の感謝を伝えるのだという。その愛が友愛なのか恋愛なのかという違いについては、人それぞれ線引きが違うという結論に達したため明確な違いは得られなかったが、愛を伝えると聞いてグウィンの脳裏にはひとりの男が浮かんでいた。
    つい一週間前、クラブケーキを送り付けた相手ーーキンセである。
    ーーまぁ、オメデトウとアリガトウは違うモンだしな。
    エオルゼア共通語には似通った言葉がある。けれどこれらは語感が似ていても意味はまた別物。それを理解できるようになった頭で、再度確認して次は方法を考える。
    言葉、物、態度。色んな手段があると聞いて、グウィンは言葉と物を選んだ。直接伝えるのは羞恥が勝って憚れるため、今回貰ったように手紙にして。
    ーーアリガトウは書けば伝わるだろうし、あとは物。…この間のクラブケーキでいいか。アレ美味かったしな。
    誕生日と似て物は相手を思いやらねば意味がない。けれどこれは即決で良いだろう。
    思い至ってモグレターを開けば、アイツからも同じような旨の手紙が届いていた。手紙を貰い慣れていないからか、こそばゆい文面に少し肌がピリッとした。美味そうな肉とあと甘そう菓子が一緒に贈られており、空腹を覚えていたことから先に前者を頬張る。
    どことなく懐かしい味わいが口の中に広がり、蟹とはまた別の野生的な旨味が溶けて、喉を滑っていく。
    ーー美味い。お礼とアリガトウと…あと。
    最後の文は適当になったが、書きたいことをまとめてモグレターで送信。
    怒涛のイベントはこれで過ぎ去り、また日常に戻る。無事に事を済ませられたことへの安堵と美味しい味わいがもう一度欲しくて、自分への褒美としてもう一口肉を頬張った。

    帝国兵の力作、対蛮神兵器のアルテマウェポンを倒したことで世界に平和が訪れたと思いきや、水面下で情勢悪化していたのだとモグルモグ王並びに蛮神リヴァイアサンが顕著したことで発覚した。
    リムサを沈ませかねない大海嘯を未然に防ぐため、戦場へ駆り出されて討伐へ。人手が足りず急遽キンセに手伝って貰うなどをして無事に事態を収めたら、次はウルダハにドマという地方の難民が押し寄せ、事を穏便にするために仲介に入りに行き。それも終わったら次はシルフ族が蛮神ラムウを神下ろししたという情報が入り、黒衣森へひとっ飛び。
    三国を駆け巡り、慌しく過ごしていたからか重要なことを目にしたのは、その日の夕方になる頃だった。
    モグレターが届き、三国の先行統一組織の勧誘で訪れていたリムサロミンサで何気なくそれを確認したところ、差出人キースから甘い食べ物が届いていた。
    冒険者になる前に世界を知る授業の一環として、食事で五原味の比較をしていたところ、甘味と苦味が苦手なことを知った。後者は丸呑みすることで耐えられなくはないが、前者は丸呑みした後に水で流し込んでも口腔に甘ったるいそれが残り続ける。口に入れた途端地獄は始まり、強烈な感覚に耐えられず吐き気を催す。
    食事を摂る上で健康が損なわれるため好き嫌いは良くないが、食べることが困難なものは避けても問題ないと習った。そのため甘味を知ってから今日に至るまで、この手の物を避けてきたのだが。
    ーー嘘だろ……。
    文面の一文に目を見張る。知り得なかった情報に目眩がしたが、二度三度目を通してもそこには『ヴァレンティオンデーは感謝をチョコレートに託して贈り合う文化の日』と書かれていた。
    チョコレート。それは知っている。何故ならそれこそ五原味の比較で初めて食べた菓子だからである。
    しかし、今日のことを教えてくれたリゼットはそんなこと一言も言っていなかったし、愛を贈る手段は手紙でも良いと教えられていた。齟齬が発生していて気持ちが悪い。けれど、キンセの手紙に添付されていた甘い菓子の存在に納得がいった。そう理解する他、避けられそうになかった。苦手と知りながらも贈ってきた。つまりはそういう意味なのだ、アレは。
    頭を垂れて打ち拉がれても、今日に残された時間の猶予はあまりない。
    ふらふらとした足取りで踵を返して、都市内エーテライトで目的地に飛ぶ。
    先行統一組織の勧誘は後回し。アルフィノは至急とは言っていなかったし、少し遅れても構わないだろう。訪れたレストランの料理長に頭を下げて、弟子入りの申し出をするくらい待てる男だと、俺は信じている。
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