ハンディキャップ「君、チェスは分かるか」
サカキ様は、唐突にそう仰った。
「ルールくらいは……」
「やってみないか」
チェス盤が机の上に置かれる。サカキ様は自信がありそうだ。強そう。
「えっ、でも本当、勝負にならないですよ」
「そうだな。では、私はクイーンとルークは使わない。それ位で丁度いいだろう」
それはとても、大きなハンデだ。クイーンは一番強い駒だし、ルークも無しとなるとかなりきついだろう。もしかしたら、勝てるかもしれない。
「分かりました」
「フフ。やるからには、真剣にやろうじゃないか」
「はい。頑張ります」
サカキ様は、ニヤリと笑った。
「賭けをしよう。私が負けたら、なんでも君の言う事を聞こう」
「えっと、じゃあ、私が負けたら……?」
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