【若草色】 レモン ベッドを背凭れにして床に並んで座り、机に置かれたお菓子やペットボトルに手を伸ばしながら、些か退屈になってきた昔の映画を観ていた。淡々とではなく、きゃっきゃっとした恋愛ものだが、何で選んでしまったのか、今では覚えがない。五本借りたら一本無料のキャンペーンにつられて借りただけだろう。五条が何の気なしにひょいっと掴んでいた筈だ。そんな中――。
「これ、本当か」
「これって」
「ファーストキスはレモンの味」
視線の先ははテレビのまま顎をしゃくって合図をした五条に、ぷはっと小さな笑い声で夏油が答えた。
「しないでしょ、レモンの味」
「しないんだ」
少し残念そうに声のトーンが落ち、肩越しに振り返った夏油が見たものは、僅かに眉を潜めてテンションが下がった親友の姿だった。
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