犬塚ぽち様のレオン君と自転双子の絡み(セバレオ) 今からのおでかけが楽しみだ。
しかも今日は天気も晴れていて、ますますワクワクする。
本日のおでかけメンバーは私の双子の弟であるシャルドネと同じスリザリン寮のレオン君だ。
おでかけはレオン君から誘ってくれた。
レオン君と友達になったきっかけは、魔法史の授業後の帰り道での出来事。
私が授業中に隠れて食べたマドレーヌの食べかすが口の端に付いていることに気付かず、付けたまま歩いていたら
「ちょっと君。そう、君。ここ……付いてるよ」
と言って、綺麗で上品な柄が刺繍されたハンカチで私の汚れを取ってくれた。
ハンカチからも彼らしい、あたりを優しく包み込むようなお日様のいい香りがした。
レオン君とは、ありがたいことにそれからも仲良くしてもらっている。
彼は凄く優しい。
男性なのに失礼かと思うが、あの温かい包容力が……母親のようで近くにいると安心するのだ。
私は孤児なので、母親というのがどうなのか実際よく分からないが。
「よかったな!レオンに誘われたんだって?シャルロット、あの店好きだもんね」
シャルドネがそう言いながら、私の頭を撫でてくる。
そう、実は最近新たにホグズミードでカフェがオープンしたのだ。
しかもメニューに私の好きな林檎のパイがあって驚いた。
だが、悲しいことに……結構いいお値段なのだ。
将来のことも考えて少しずつ貯金している私では、本音で言えば毎日通いしたいところだが難しい。
なので、試験を頑張った日とかで自分のご褒美として弟と店にちょくちょく通っている。
「お待たせ2人とも!」
そうやって登場した彼レオン君は、いつも通りのオシャレさんだった。
白いフリルのついた、袖が膨らんだブラウスの上に小さめのサイズの黒いベストを着ていた。
服に合うように、お揃いで黒い手袋もはめている。
小さいベストを着ているからか彼の腰の細さが目立っている。
たぶん、彼はそのことも計算して着こなしているのだろう。
男性なのに女性物を着て違和感を感じるどころか、元々レオン君のために作ったんじゃないかってぐらいしっくりきている。
私は密かに彼は有名デザイナーにでもなれるんじゃないかと思っている。
ちなみに、私ら双子の服も事前にレオン君が選んでくれている。
「……おい、君ら今から出かけるのか?」
そこで授業から帰ってきたセバスチャンと鉢合わせした。
「ふふふっ、そうだよセバスチャン。今からレオンとデートするんだ。どうだい?羨ましいだろ??」
「っは?!僕はそんなこと聞いてない!」
「あぁ……ね!ほら、この前言ったじゃん?シャルロットとカフェに出かけるって」
レオンはセバスチャンをあやすように話しかける。
「だけどアイツと出かけるとは聞いていない!」
ビシッとシャルドネに指を指すセバスチャン。
それに対して、シャルドネは涼しい顔で微笑んでいた。
「こらこら、人様に指を指すなよ」
「彼はだめだ」
「おいおい、私に君のレオンが取られちゃうって?あれれ?もしかして自身がないのかな?」
あははははっ!
とシャルドネの豪快に笑う声が談話室に響き渡る。
弟はセバスチャンを揶揄うのが趣味なのだ。
「……っく、待っとけ……僕も準備する」
「っおい、何当然のように付いて来る気だセバスチャン」
セバスチャンはクルッとこちらを振り向く。
「なんだ?当たり前だろう?レオンが行くんだ、僕も行く」
そう言って、セバスチャンは急いで自室に駆け込んだ。
「あー面白い。実に面白いよセバスチャン。マジ必死すぎ」
シャルドネは笑いすぎて、若干出た涙を拭っている。
「……シャルドネ、そう揶揄わなくても……まぁ揶揄いたくなる気持ちは分かるけど」
「正直これでも抑えてるほうだよ?」
そう言いながら、シャルドネは視線をレオンに移して微笑み出す。
微笑んだ瞬間、辺りの空気がガラッと変化する。
「……なぁ、知ってたかレオン君」
そう言って、シャルドネが流れるようにレオンの片手を掴み取り、甲に自身の手を重ねる。
そして、重なった自身の手の甲のほうにチュっとキスをする。
……また、そうやって人を試して……。
弟の悪ふざけのターゲットが、今度はレオン君に変わったようだ。
「こうやって……美しい貴方にキスをしてみたいと思う輩が出始めているんだ。どう?気付いていた?」
「……もしかして、最近セバスチャンがああなのは……」
普通ならここで皆んな赤面してアワアワしているところだ。
だけど、彼は面白いことに全然シャルドネに靡いてないようだった。
さすがだレオン君。
「…………ふふっ」
シャルドネは意表を突かれたのか、面白そうな目でレオンを見ている。
「セバスチャンも勿論気付いているよ。なんせあんなに貴方にご執心だからね」
シャルドネはそう言いながら、パッと彼から手を離す。
「あぁーでもしないと、私みたいな不届き者が貴方を掻っ攫うからね。大事なら隙を見せないよう厳重に守らないと」
まぁ、相手が私だと武が悪いかもな!
そう言いながら、弟はまたケタケタと笑い出す。
そして一通り笑った後、シャルドネは急に真面目な顔をしてレオンに視線を向きなおした。
「……どうか、彼を見捨てないでほしい。彼は何かと寂しがりだからな。いつ破裂するか………まぁ、貴方にこんなこと言わずとも理解してはいるとは思うが……、それでも――」
「――分かってる。君の言いたいことは。……君、人を揶揄っているけど、やっぱり優しいね」
「……ふふっ、君ほどじゃないよ。なぁ、シャルロット!」
話が私に振られたので、私は肯定の意味を込めて頭をブンブンと縦に振る。
弟よりレオン君のほうが断然優しいに決まっている。
「何を話してたんだ?」
着替え終わったセバスチャンがやって来た。
「おいおい、遅いじゃないか!てっきり、部屋でファッションショーでも開催してたんじゃないかと思ったよ」
「……そうやって、また揶揄って……」
「あ!セバスチャン、ネクタイが曲がってる。ちょっとこっち来て」
レオンが手招きでセバスチャンを呼び寄せる。
「んっ」
セバスチャンも素直にレオンのところに行き、直しやすいように少し前のめりになる。
私は隣にいる弟に小声で話しかける。
「……セバスチャン嬉しそうだね」
「あぁ、なんだあのデレデレとした顔は」
やれやれといった表情でシャルドネは手をヒラヒラさせる。
「……、よしっできた。これで皆んな準備できたね。じゃあ行こう」
レオンはそう言うと、慣れたようにセバスチャンの手を掴んで先を誘導する。
ふふっ、レオン君とセバスチャン2人とも幸せそう。
末永くお幸せに……。